山縣 淳子

YAMAGATA JUNKO
理学部 物理科学科 教授
学位
博士(理学)
専門分野
ハドロン原子核物理学

研究テーマ

ハドロンおよびハドロン多体系に関する理論研究

高校生に向けた研究内容の紹介

「質量があるのはどうしてだろう?」という大きなテーマのもと、陽子や中性子で構成される原子核に中間子という粒子を入れたときに中間子の性質がどう変化するか、ということについて理論研究しています。陽子や中性子、中間子はどれも素粒子であるクォークでできており、ハドロンと呼ばれます。我々を形作る物質の構成要素であるハドロンの性質を解明することは、我々の世界にある4つの相互作用の1つである強い相互作用の理解につながります。

「質量」の真理に挑みます。

「質量とは何か?」──その問いが私の研究の中心にあります。例えば、同じ個数の原子でつくったアルミニウムと鉄の塊は、体積がほとんど同じなのに質量が倍も違う。何が質量を生み出しているのでしょうか。
そのヒントは、原子よりもミクロの世界、原子核の中に分け入ると見えてきます。原子核は原子の質量の99.9%以上を担っていて、その内部は超高密度の状態。原子核は陽子と中性子からできていて、さらに陽子と中性子は素粒子「クォーク」からできています。
ところが、陽子の持つ3つのクォークの質量を全部足しても、陽子の質量の1%にもなりません。陽子の質量(ひいては身の回りの物質の質量)の残り99%は、実は陽子・中性子の中でクォーク同士をくっつける「強い力」にあると考えられています。強い力は、自然界に存在する4つの力の1つで、残りは「電磁気力」「重力」「弱い力」があります。従って、強い力の解明こそが「質量の謎」に迫る鍵になるのです。

世界で最も小さい単位「クォーク」が結び付いたものが「ハドロン」です。このハドロンに働く強い力が、物質の「質量」に関わっていると言われています。

私が研究しているのは、陽子や中間子など、クォークからできている粒子「ハドロン」です。ハドロンが原子核に飛び込んだとき、原子核とハドロンの間にどんな力が働いているのか。これを理論的に調べ、また理論研究の立場から実験の提案をしています。例えば、茨城県の大強度陽子加速器施設(J‐PARC)では、炭素原子核に反K中間子をぶつける実験を行っていて、私はその理論解析を進めています。
目的は、理論的に予想されている反K中間子と原子核の間の強い引力を検証することです。反K中間子は宇宙に浮かぶ半径10kmの原子核「中性子星」の内部にも出現すると考えられているので、中性子星内部の状態を再現することにもつながります。

ゼミナール/研究室のテーマ

ハドロンおよびハドロン多体系に関する理論研究

物質の構成要素であるハドロンの性質を解明し、強い相互作用を理解することを目的として研究しています。特に、中間子を原子核内に束縛させた中間子原子核系を通じて、有限密度中における中間子の性質変化に関する理論予言を行っています。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

量子力学で学んだ知識を応用し、プログラミングによる数値計算を通じて、さまざまな物理的状態を計算・解析しています。例えば、特定の条件下での束縛状態や生成反応を計算し、PC上で多様な仮説検証や思考実験を繰り返すことができます。これにより、実験では再現が難しい条件や系についても、理論的なアプローチで深く探究することが可能になります。数値シミュレーションを駆使し、理論と実験の橋渡しを目指しています。

プロフィール

自然いっぱいの山口県で生まれ育ちました。高校までは数学が一番好きな科目でしたが、大学進学を考える中で、数学を言語として使う物理学に興味を持ちました。大学で物理を学ぶうちに、特に「元素合成」に惹かれ、私たちを形作る元素が宇宙の進化の中でどのように作られてきたのかに関心を持ちました。元素合成は、多数の原子核反応の連立方程式で表されます。そこから現在の研究分野であるハドロン・原子核物理学へつながっています。

高校生へのメッセージ

高校生の皆さん、自分の「好き」や「興味」を大切にしてください。私も高校時代に好きだった数学から、物理学への道が開けました。皆さんの今の学びや経験が、思わぬ未来への扉を開いてくれるかもしれません。自分のペースで楽しみながら学ぶことを続けましょう。