齊藤 国靖

SAITO KUNIYASU
理学部 物理科学科 教授
学位
博士(理学)
専門分野
統計力学

研究テーマ

非平衡物理学

高校生に向けた研究内容の紹介

時間的に変化するダイナミックな状態のことを非平衡状態といい、理想的な平衡状態よりも考えるのが難しく、まだ解らないことが沢山あります。また、私達の身の周りの物質は非平衡状態であることが多く、時々刻々と変化する多様な構造を普段から目の当たりにしています。この様な非平衡状態を保つにはエネルギーの流れが必要であり、物質に外力を加えると同時に、物質の内部でエネルギーを失う(散逸する)メカニズムが必要です。その端的な例が摩擦力や粘性力であり、粉体やコロイドなど、原子や分子に比べてはるかに大きな粒子の集まりにおいて、非平衡状態は容易に維持されます。そこで、エネルギーを散逸する粒子の非平衡状態を理解するため、理論的な計算や数値シミュレーションを駆使して研究に取り組んでいます。例えば、図はランダムに配置された粒子内部の応力鎖を可視化したもので、複雑な力のネットワークが空間に張り巡らされている様子が解ります。

非平衡物理学

物質の非平衡状態を扱う非平衡物理学が研究室のテーマです。特に、粉体など巨視的な粒子の集まりである散逸粒子系について、理論と数値計算の両面から研究に取り組んでいます。散逸粒子系には個々の粒子がエネルギーを保存しないという特徴があり、外力によって駆動することで、エネルギーの注入と散逸がバランスした非平衡定常状態が実現されます。この特徴を利用し、非平衡状態における輸送現象、レオロジー、乱流構造、動的不均一性、応力鎖の組み換えなどを調べ、これまでの非平衡物理学をさらに拡張しようと試みています。また、散逸粒子系のジャミング転移が固有振動や粘弾性に果たす役割なども明らかにしようとしています。

ゼミナール/研究室のテーマ

統計力学

多数の粒子から成る粒子系の物性を調べます。特に、身の回りにある古典的な粒子に着目し、粉末状の食品や薬品、化粧品に代表される粉体や、泡や油滴(エマルジョン)、コロイドなどのソフトマターが研究対象です。また、生物の集団をモデルとするアクティブマターや、パーコレーション、フラクタル、複雑ネットワークなど、より抽象的な概念に基づいた複雑系も対象です。この様に、当研究室の特別研究では、物理学に限らず、化学、生物学、社会科学にも関わる分野横断的なテーマに取り組むのが特徴です。これらの研究を支えているのはコンピューターを用いた数値計算であり、平衡系の統計力学に加え、非平衡系の統計力学を基礎とするデータ解析も行います。
特別研究に取り組むことで、統計力学に基づいた統計的手法や数理科学的なデータ解析手法を習得することができます。また、コンピューターを使って研究を行うため、C言語などのプログラミングスキルや、ソフトウェアを使った数値データのグラフ化、シミュレーション結果の可視化など、データ解析に関するスキルも習得できます。さらに、研究成果の発表や報告を行うことで、文書作成やパワーポイント作成のスキル、人前でのプレゼンテーション能力も身に付けることができます。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

卒業研究では身の周りの散逸粒子に着目し、粉体や泡、コロイドや油滴(エマルジョン)などのソフトマターや、生物の集団をモデルするアクティブマターの性質を理論的に調べます。また、パーコレーション、フラクタル、ネットワークなど、より抽象的な概念に基づいた複雑系も研究対象です。この様に、物理学だけでなく、化学、生物学、社会科学にも関わる分野横断的なテーマに取り組むのが特徴です。これらの研究を支えているのはコンピューターを用いた数値計算であり、非平衡物理学に基づくデータ解析が卒業研究の重要な部分になります。

プロフィール

大学生の頃、自己組織化という言葉に出会い、物質が自発的に形を創る現象に興味を持ちました。その後、卒業論文では結合振動子の同期現象に関する実験を行い、自己組織化をさらに理解するため、大学院では非線形科学の分野に進もうと考えていました。しかし、実験よりも理論的な仕組みを理解したいという気持ちが強く、非平衡物理学を専門とする研究室に進学しました。そこで初めて散逸粒子系の理論や数値計算を学び、修士論文では粉体の流体力学的不安定性という、ある意味、自発的に形を創る現象を調べました。その後、博士課程で粉体の弱非線形解析までを行い、海外での研究員生活、国立大学での教員を経て、現在でも散逸粒子系の研究を行っています。

高校生へのメッセージ

大学に入り社会に出るまで、自分にしか出来ないと思えることを見つけて下さい。使命感を持って直向きに努力すれば、社会に出てからも必ず成功するはずです。理学部の専門分野は多岐にわたり、ここで学ぶことは「自分にしか出来ないこと」を発見する大きなチャンスです。また、自然科学の普遍性に触れることで、自分の可能性を大きく広げる発想力も養われます。皆さんが生涯の目標を見つけて直向きに取り組めるよう、精一杯応援したいと思います。