
研究テーマ
高校生に向けた研究内容の紹介
原子核・素粒子の研究で用いる検出器や電気回路、コンピューティング技術は社会での応用に密接に関わっています。
素粒?(ミクロの世界)の研究から謎多き宇宙の原理に迫る
皆さんは「初期の宇宙はビッグバンという大爆発だった」という話をご存知でしょうか?ビッグバンの頃の宇宙は恒星の内部等よりもはるかに高温で素粒子の生成と消滅が繰り返されていたと考えられています。その後、宇宙が膨張し冷えるにつれて素粒子の1つであるクォーク同士が結びついて陽子や中性子が生まれ、さらに陽子や中性子が結びついて原子核が創られました。ミクロの世界での物理現象の研究は初期宇宙での物質創生を調べることに繋がります。また、宇宙の誕生から存在し、現在も宇宙を満たしていると考えられている「暗黒物質」が未知の素粒子なのか、その正体を明らかにすることで宇宙の成り立ちを理解する事ができます。私はこれらの謎に興味を持って、加速器という施設を用いて素粒子・原子核の実験研究を行っています。
素粒子・原子核の実験では新しい技術を応用して実験装置を作ったり、装置を自分の手で組み立て動かしたりしてゆくという、理論計算とはまた異なった面白さがあります。また、新たな実験装置のための基礎技術は実社会での応用に貢献していると思います。そして、自分が立てた仮説に対して実験結果という形で自然が答えてくれる瞬間が実験物理の醍醐味です。
ゼミナール/研究室のテーマ
原子核ハドロン物理
クォークやグルーオンが強い相互作用で束縛した粒子をハドロンと呼びます。4つ以上のクォークで構成されるハドロンの研究や原子核中でのハドロンの性質の研究からクォーク・グルーオン間の相互作用や質量の起源を調べることができます。これらを実験で研究するためにはハドロンの生成、崩壊時に生じる粒子(放射線)を測定する必要があります。この研究室では放射線検出器を自分達で作り、放射線を実際に測定することで、素粒子・原子核物理の実験技術を学びます。
※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。
ゼミ/卒業研究の紹介
特別研究では学生さんの興味に合わせて様々なテーマに取り組んでいます。
新種の粒子の探査のデータ解析だけでなく、新しい実験のための放射線検出器の開発を行ったり、開発した検出器の性能評価実験をスプリングエイトなどの加速器施設で行なったりしています。また、ミューオグラフィのための装置開発も進めています。研究がまとまれば、日本物理学会などで学生が口頭発表しています。
特別研究では学生たちが自分で考え、自分の手で工夫を凝らすことで研究を進めてゆくことを目指しています。目の前の現象や失敗に対して自分で考え工夫してゆく過程を通じて、物理の基礎から考える力が養われると思います。メーカーに就職した卒業生は、製品開発や製品の評価を行う際に回路中の電子の動きなど物理の根本から問題点を考えることができるようになった、と語っています。
プロフィール
中学・高校はクラブ活動メインの生活でしたが、高校には数学好きの友人がいて、彼らから文系科目も含めたあらゆる事柄を論理的に考えることを学びました。