中嶋 祐介

NAKAJIMA YUSUKE
理学部 数理科学科 准教授
学位
博士(数理学)(名古屋大学)
専門分野
可換環論、環の表現論

研究テーマ

可換環論・環の表現論・特異点論

高校生に向けた研究内容の紹介

「環」と呼ばれる数学的対象を研究しています。例えば、整数全体の集合や多項式全体の集合は環の一例です。環は暗号理論や符号理論など、情報通信技術にも応用されています。環を調べるための様々な手法がありますが、表現論や組合せ論といった他分野の手法を用いて環を理解できることがあります。私はそのような分野の垣根を越える数学に魅力を感じており、不変式論やマッカイ対応といった話題に関する研究を行っています。一見関係がなさそうな対象間に新たなつながりを見出したときには、感動を覚えます。

宇宙の謎も解き明かす? 環論で特異点の性質に迫る。

「環」と呼ばれる特別な集合について研究しています。環とは足し算・引き算・掛け算ができる集合のことで、たとえば整数全体の集合や、多項式全体の集合がこれに当てはまります。
この研究室では、環の性質を知ることからスタートします。そして環論をベースに、基本的な研究対象となる多項式を使ってさまざまな計算を試し、「この方程式からどんな図形が現れるか」「その図形はどんな性質なのか」を考えていきます。たとえば私が注目している「特異点」はその試行錯誤のなかで現れる対象の1つです。特異点とは図形上の尖ったり交わったりしている部分のことで、いわば“図形のアイデンティティ”。図形の性質を知るうえで避けて通れないものです。この特異点を理解するために、対称式や不変式といったさまざまな多項式への理解を深めていきます。
「ブラックホールも宇宙の特異点」といわれるように、特異点について突き詰めていくと宇宙の成り立ちに関する研究にも応用できる可能性があります。さらに、環論だけでなく表現論や組み合わせ論といった他の分野ともつながっていくところに面白さがあります。見た目が全く違うものでも数学的な性質をひも解いていくと、実は同じ構造をしていることもある。そんな発見に出会えたら「数学って楽しい!」と感じてもらえるはずです。

ゼミナール/研究室のテーマ

可換環論、環の表現論

「環」と呼ばれる数学的対象を研究しています。例えば、x^2+y^2=1をみたすx,yの集合は円となりますが、考える方程式を変えることでさまざまな図形が現れます。各方程式に対して付随する環を考えることができ、環を調べることで図形の性質を理解することができます。環と図形の間にある不思議な関係を理解するのが目標です。


※特別研究とは、4年間の学びをもとに各自が研究テーマを設定し、教員の指導を受けて研究を深め、卒業研究としてまとめるもので、理学部での4年間の集大成となる重要な授業です。

ゼミ/卒業研究の紹介

特別研究では、まず群・環・体などの代数学における基本的な概念を学びます。これらは抽象的な概念ですが、多くの具体例に触れることで理解を深めていきます。その後、代数学に関する問題を設定し、受講者同士で議論することを通じて、数学研究の一端に触れていきます。これまでの特別研究では、不変式論、ガロア理論、団代数に関する話題を扱ってきました。情報通信技術への応用に関心がある学生には、暗号理論に取り組んでもらいました。

プロフィール

出身は長野県で、大学から愛知県に移り住みました。中学から大学にかけては部活動に明け暮れていました。当時は数学の研究者になろうとは思っておらず、周りに合わせるように就職活動をしましたが、内定を得た頃に勉強していた数学がとても面白く、もっと知りたいという気持ちが強くなりました。結局、4年間企業で働いた後に、数学の世界に戻ってきました。少し遠回りをしたかな、とも思いましたが、遠回りをしたからこそ出来た経験、出会えた人・研究テーマがあり、その巡り合わせに感謝しています。

高校生へのメッセージ

数学を学んでいると、「なぜこんな解法や証明を思いつくのだろう」と感じ、同時に思いつけなかったことに落ち込むこともあるかもしれません。しかし、最初からエレガントな解法を思いつける人は多くありません。多くの例を計算したり、設定を変えて考えたりしていくうちに、問題の本質が見えてきます。そして、一度その本質がわかると、以前は難しく感じた解法が自然に見えてきます。数学の勉強では、このような試行錯誤を通じた理解の過程を大切にしてほしいと思います。