新 恵里

ATARASHI ERI
法学部 准教授
学位
「博士(学術)」
専門分野
被害者学

研究テーマ

犯罪被害者支援政策に関する研究

高校生に向けた研究内容の紹介

犯罪被害者への支援政策に関する研究をしています。私たちの社会の中で、犯罪が発生した時、被害を受けた方はその後、どのような支援がなされているのでしょうか。実は、わが国では、犯罪被害者への支援の歴史は浅く、法的にも、社会的政策としても、長年置き去りにされてきました。その反省から、犯罪被害者への支援の取り組みがなされてきたのは最近のことです。そして今なお、さまざまな課題が山積みです。 本学では、「被害者学」「被害者政策」という科目をメインに担当しています。 法学部の教員ですが、臨床心理士、公認心理師として、このテーマには、心理学的なアプローチも行っています。

被害者学・被害者政策-現代日本の喫緊の課題である被害者支援について学外活動などを通して実態を理解し、研究していく

被害者支援の
しくみについて
実際の事例を基に考察

犯罪被害者への救済制度といった社会的支援について学びます。この分野は社会的要請が高かったにもかかわらず、日本ではほかの先進国と比較して法的にも政策的にも整備が進んでいませんでした。その経緯を踏まえながら、現在の被害者支援に関する法制度・システムの問題点や課題、そして将来の被害者支援のあり方について、官民で行われている事例を題材に考察します。そのため刑務所見学やイベントへの参加といった、学外活動の機会が多いことも特長です。

加害者の「被害者性」にも
着目し「見えにくい」
社会課題に挑む

被害者支援では、「新たな被害者をつくらない」という観点から、「再犯防止」のための取り組みも必要となります。そこでは幼少時の被虐待経験など、加害者に潜む「被害者性」についても考慮しなければならず、これらを踏まえた加害者更生のしくみについても学びます。犯罪被害者への社会的支援は、現代日本が抱える「見えにくい」喫緊の課題のひとつです。警察官など公務員を志望する学生だけでなく、あらゆる学生に関心を持ってもらいたいと思います。

Column
先輩の声
制度やしくみだけでなく
「心のケア」の重要性も実感

法律学科2年次 山口 茜梨沙

このゼミでは、被害者支援における「心のケア」も重視しています。例えば、恒例行事のひとつである「生命のメッセージ展」のボランティア活動では、事件の当事者に寄り添うだけではなく、被害者問題について深く考えることができました。また、刑事施設・少年施設に参観をし、専門的な知識を学ぶと同時に、刑事政策を考える上での大きな手助けになっています。

ゼミナール/研究室のテーマ

被害者学・被害者政策研究

被害者学は、犯罪学から分科した比較的新しい学問です。犯罪、虐待、災害などの被害について、被害者の救済や支援システムの必要性が指摘されています。被害者問題の歴史、海外の支援政策状況と日本の制度の比較、今後の課題などについて議論します。

ゼミ/卒業研究の紹介

犯罪被害者支援のあり方について学ぶゼミを担当しています。専門的な知識を身につけることは大切ですが、このテーマは、座学だけではなく、実際に見て、聞いて、考えるフィールドワークも大切で、そのために、学外実習に出かける機会をもうけています。被害当事者の方のお話を伺ったり、被害者支援のイベントを主催したり、ボランティアとして参加したりする活動も行っています。合宿で、ゼミ生同士で交流を深める機会もあります。ゼミの卒業生には、警察官として犯罪被害者支援に携わるなど、ゼミでの学びを仕事に繋げて活躍している人もいます。

プロフィール

大阪市内の真ん中、都会で生まれ育ちました。その中で起きる犯罪を目の当たりにしながら、今のテーマに関心をもつようになったのかもしれません。 プライベートでは、のんびりするのが好きです。スキューバーダイビングで、海底であおむけになってボーっと海面の天井を眺めたり、無心にお料理をするのが趣味です。研究で頭が煮詰まったら、ジャムを煮詰めています。

高校生へのメッセージ

視野を広くもって、悠々とまわりを見渡してみてください。そして、今そこにあるのが「当たり前」と思わずに、なぜだろう?どうしてだろう?という疑問をもってみてください。被害者学は、私の学生時代には、開講している大学も、研究室もほとんどありませんでした。あるものをなぞることも必要ですが、ないものを切り開く力も大切です。