
研究テーマ
応用数学(逆固有値問題、可積分系)
高校生に向けた研究内容の紹介
一般に、非線形方程式は厳密に解けないことが多いのですが、非線形でありながら厳密な解を書き下せる特別な非線形方程式のことを「可積分系」と呼びます。その背景にはある種の線形性、美しい数理構造があります。
一方で、PCやスマホの便利さはデータ解析や画像処理などの情報技術が支えていますが、そこには数学が切っても切り離せません。例えば、大学の線形代数の講義で扱う行列はデータを表しており、そのデータの特徴は行列の固有値が表していると捉えることができます。
私は、可積分系のもつ数理構造の美しさを利用することで、そういった行列固有値の問題を解決する研究に取り組んでいます。
数学の理論で情報技術に革新を。-行列計算の理論とアルゴリズムの開発
パソコンの検索画面にキーワードを入れると瞬時に結果が現れますね。あるいはSNSを使っていると、この人は「知り合いかも」と教えてくれる。こうした便利な機能は数学の理論に基づき設計されています。入力された膨大なデータ(数字の羅列)を、コンピュータが決められたアルゴリズムに従って計算し、答えを導き出しているのです。
データは数学の世界では「行列」として捉えることができ、数学の知識を利用することで、「行列=データ」の特徴を抜き出せます。特徴を抜き出すことで、誰と誰が「知り合いかも」という推定に至ります。この行列の性質を調べたり、行列を作成したりするための理論と、その理論をコンピュータで実現するためのアルゴリズムの開発が私の研究テーマです。
理論自体はそこまで難しいものではないのですが、基礎研究だけに汎用性が高く、新たなモノを生み出す工学や情報技術の根幹に貢献できる分野だと思っています。
世の中のさまざまな現象は、数式などの数学の言葉で表現することができます。数学の問題としての解き方が分かれば、今度はその解法を応用して現実の問題の解決につなげていけるはずです。
そのようなアプローチの基となる数学の理論や手法を開発しています。
ゼミナール/研究室のテーマ
行列計算の理論とアルゴリズムの開発
Webから必要な情報を抽出したり、売上のデータから顧客の嗜好を調べたりする際、巨大なデータをコンピュータを使って解析する必要があります。こうしたデータは数学の世界では「行列」として捉えることができます。行列の性質を調べたり、行列を作成したりするための理論と、その理論をコンピュータを使って実現するためのアルゴリズムの開発を行っています。
ゼミ/卒業研究の紹介
研究室には主に、数学とデータ分析に興味を持つ学生が所属しています。
数学では、行列固有値の問題に対して、新しい解法を考えたり解法のプログラムを書いて数値実験をしたりします。データ分析では、野球やサッカーといったスポーツなど、各学生が興味のあるテーマのデータについて収集し、分析を行っています。最近では、選手の成績データをもとに今シーズンの受賞選手を予測したり、新しい選手評価の方法を考えたりしています。
プロフィール
滋賀県の山奥で自然に囲まれながら、春は山菜取り、夏は川遊び、秋はさつまいも掘り、冬は雪遊びをして、のんびり育ちました(こう書くと非常にアクティブなように思えますが、今はインドア派です)。
地元は田舎なのでほとんどお店はありませんでしたが、京都は美味しくておしゃれなお店がたくさんあり楽しみが多いです。特に甘味が好きです(和洋どちらも!)。
とても不器用で、大学時代の物理・化学・生物の実験では何度も失敗した苦い記憶があります。私の研究(数学)では、プログラムを書くと計算機(PC)が数値実験をやってくれるので、とてもありがたいです。
高校生へのメッセージ
大学では生物を専攻するつもりでしたが、大学入学後、線形代数の授業でヴァンデルモンド行列式を計算したときに「美しい!楽しい!」と感じ、数学専攻に心変わりしました。そんなヴァンデルモンド行列式とは、授業だけでなく研究でも長い付き合い(?)になっています。今考えると、情報理工学部のように入学後に軸となるコースを選べる学科で良かったなと思います。
もし心惹かれるもの・ことに出会えたのなら、自分の直感を信じて、ぜひ挑戦してみてくださいね。