北澤 義之

KITAZAWA YOSHIYUKI
国際関係学部 国際関係学科 教授
学位
国際学修士
専門分野
中東地域研究、国際関係論(ナショナリズム)

研究テーマ

中東のナショナリズムと国家形成

高校生に向けた研究内容の紹介

現在、中東と呼ばれる地域は、ヨーロッパ、アジア、アフリカの交差点にあたり、古くから文明の栄えた地域です。しかし、20世紀には植民地化をへて多くの独立国が誕生しました。豊かな歴史遺産を持ち、石油・天然ガスなどのエネルギー資源の恩恵にあずかる一方、経済格差や政治的不安定に直面しています。グローバル化が進む現代において、この地域の問題は決して遠い場所の他人事ではなくなりつつあります。現地の政治、経済、宗教などにも目を向けた地域研究によって、国際社会の安定や地域の健全な発展に貢献することを目指します。

ゼミナール/研究室のテーマ

グローバル社会における民族・エスニック問題

多元化する社会を受け止め、対応を検討する。

現代の国際社会のもとになっているのが、近独立主権国家です。これは国際社会が発展するうえで重要な役割を果たしてきました。しかし、現代の世界はグローバル化がすすむことで、一体性を強め、脱国家的な主体(NGO、多国籍企業、国際組織など)が影響力を強めています。また脱国家的な目標や価値(環境問題や人権を重視する共通の認識)が生まれ影響力を拡大していることももう一つの特徴です。それでは、国家の存在や国民の存在は低下し、消滅しているでしょうか?実際には、国家やそれを支える国民、民族といったアイデンティティ(一体感)はグローバル化の進展にもかかわらず個々人のアイデンティティの中で影響力を失わず、そのよりどころとなっています。現代社会は人の移動に伴って国家や国民といった旧来の意識が強調されることにもつながっています。それは難民問題や移民問題と結びつくと、排他的な面を持つこともあります。しかし、その一方で互いの文化を尊重しなければならないという多文化主義も広がりつつあります。そのような、現代におけるナショナリズムやエスニック問題の実態や課題をテーマとした論文を書いたり、毎週世界で起きている重要なニュースについて紹介しあって議論することで、思考力や議論する力を身に着けてることがこのゼミの目標です。

ゼミ/卒業研究の紹介

担当者は、中東のナショナリズムを研究してきましたが、広く現代の国際社会においてナショナリズムとかかわる様々な事象についても関心を持ってきました。そこで、本ゼミでは、世界各地のナショナリズムにまつわる事象、たとえば、国民形成、先住民問題、移民・難民問題、マイノリティ問題、多文化主義と社会共生など多岐に亘るテーマについて調べ、議論を重ねながら、各自興味を持ったテーマについて論文を作成することを目的としてきました。

プロフィール

神奈川県出身ですが、京都にやってきてもう30年になります。パレスチナ問題から始まり、エジプト革命、ヨルダン政治、アラブ連盟外交など中東の政治の研究をしてきました。調査のためほぼ毎年アラブ諸国を訪れました。院生時代に初めて訪れたヨルダン川西岸で、密入国者と疑われイスラエル兵に半日拘束された時、兵隊がこちらに向けた小銃の安全装置を解除したカチャという音が耳に残っています。紛争が絵空事ではないのだということを実感しました。他方、ヨルダンで日本大使館の専門調査員として過ごした3年とその時にできた現地の友人たちとの交流は懐かしい思い出です。

高校生へのメッセージ

今は情報やコミュニケーションツールの発達により、手軽におおくの知識に触れることができます。ただその情報や知識が果たして本物なのかどうかは、自分が行動して確認することも重要になります。そのために頼れる自分なりの手段を手に入れることもよいでしょう。私の場合は、英語のほかにアラビア語を学んだことです。自分の経験からは基本的には迷ったら行動することを選んだ方が、後悔は少ないと思います。ただ、自分なりによく考えること、そのうえで人に相談することも必要でしょう。