研究テーマ
社会階層論、計量社会学、社会調査法、パーソナリティ心理学
高校生に向けた研究内容の紹介
格差と不平等の問題について研究してきました。アンケート調査(量的社会調査)によって大勢の人びとからデータを収集し、統計学を使って分析するのが私の研究方法です。格差が生まれる要因として、これまでの社会学的な研究は、生まれ育った家庭の特徴(親の学歴、職業、収入)や本人の学歴に着目してきましたが、私はソーシャルスキル(コミュニケーション能力)やパーソナリティ(性格)といった「心の特徴」に焦点を当ててきました。近年は格差論からテーマを広げ、パーソナリティと菜食主義(ベジタリアン、ヴィーガン)の関係について分析をしています。心の特徴はこれまでの「あたりまえ」(社会規範)を変えていく可能性があるため、いろいろな「あたりまえ」が混在する多様性社会におけるパーソナリティの機能に関心を持っています。
ゼミナール/研究室のテーマ
セルフ・リーダーシップ:自分自身のリーダーになる
このゼミでは、自分自身のリーダーになることを目指します。リーダーとは自分や仲間が向かうべき場所を明確に示せる人のことです。「自分は何をしたいのか」、「自分にとって幸福とはどのような状態か」という根本的な問題を問い続け、行動することでそれを明らかにしていきます。自分のリーダーになれれば、地域や社会のリーダーにもなれるでしょう。
ゼミ/卒業研究の紹介
「セルフ・リーダーシップ:自分自身のリーダーになる」というゼミをやっています。このゼミでは「誰かが決めたゴール」に向かって効率的に活動することは行いません。計画性、合理性、コスパ、タイパといった考え方からは距離を置き、焦らずじっくりと時間をかけます。関心のあることに日常的に接する(最低でも週5日)ことで、「自分の専門」を確立しつつ、これまで見えていなかったものが自分の中から立ち現れることを目指しています。たとえば、ある学生は人びとが「大切にしているもの」についてインタビューを重ねています。実際に人に会い、多様な価値観に触れていきます。そこから自分の価値観を探ることが当面の目的ですが、卒業するころにはどうなっているでしょうか。「インタビュー(研究方法)と価値観(テーマ)が自分の専門です」と言えるだけでなく、はじめは想像もしていなかった「自分らしさ」を見つけているのではないかと思います。
プロフィール
先日、落語の寄席を見に行ったのですが、ものすごく面白かったので驚きました。ある本に「人間のどうしようもないところ、ダメなところを肯定するのが落語」と書かれていたので見に行きました。ある噺の中で、身近な人びとに迷惑をかけ、他者からの助言を理解しようとせず、ようやく理解したと思ったらはじめから知っていたかのように友人に吹聴する(しかも内容を間違えている)男が出てきたのですが、「これは自分のことだ」と思いました。自分の中にもあるダメさが体現されていると感じたとき、なんとも言えない可笑しさが込み上げてきました。
高校生へのメッセージ
受験生に面接をしていると、「大学に入るまでにやっておいたほうがよいことは何ですか?」と聞かれることがよくあります。やる気があるのは素晴らしいことですが、人生は準備ではないので、「やっておいたほうがよいこと」にこだわりすぎないほうが良いと思います。高校生のころは大学の準備をし、大学生のときは就職活動の準備をし、就職したら老後の準備をして・・・というのであれば、一体、いつ人生を生きるのでしょうか。それよりもむしろ、理由はないけど興味があること、ただ何となくやりたいこと、それ自体を楽しいと思えることを大切にしたほうがよいと思います。私のゼミでは、このような充実感につながる個人的な問題関心を、これまでの学問的な蓄積にアクセスしながら発展させることを目指しています。