
研究テーマ
聖母マリアの晩年の物語がどのように絵画に描かれたのかについて研究しています。主にイタリアを中心とする中世からルネサンスの作例について研究してきましたが、最近は、この物語伝図像が近世以降に世界中に広まった事象にも関心を持っています。
サブ研究テーマは「洞窟聖所研究」で、南イタリアの洞窟聖堂や日本の洞窟聖所についてフィールドワークをしています。
高校生に向けた研究内容の紹介
西洋美術でしばしば描かれる聖母マリアの晩年伝は、実は聖書に記述のないものです。聖書に書かれていない物語は外伝、いわばスピンオフとして、後世の人々によって作り出されたものでした。私たちの身の回りにも「スターウォーズ」や「鬼滅の刃」のようにスピンオフを生み出した作品が多くあります。そして興味深いことに、「スピンオフ」は「正典」の内容を補完する役割まで持つことがあるのです。このように、私の研究は「聖母マリアの晩年伝」を軸としつつ、物語(テキスト)と美術表象の関係性について追究するものです。

ゼミ/卒業研究の紹介
私のゼミでは「西洋美術を中心にイメージの世界を探検する」がテーマです。「イメージ(像)」とは、絵画や彫刻などの伝統的な美術作品をはじめ、広告やデザインまでも含みます。その作品が、いつ、誰によって、なんのために作られたのか。それを見る人たちにどのような問いを投げかけているのか。学生の選んだ作品に応じてこれらの問いを掘り下げていきます。イメージのような「言葉で表現されないもの」を扱い、理解を深め、「言葉で説明する」スキルは実社会でも役立つものですし、なにより、美術鑑賞の楽しみを覚えることは生涯続く喜びに繋がります。
また「本物に触れる」経験もとても大切です。美術館見学や見学旅行も積極的に実施しています。本物をどれだけ見たかという積み重ねは教養を深めるものであり、美術史学は歳を取ることが楽しみになる学問でもあります。
プロフィール
中学校の美術の授業がきっかけで美術史に興味を持つようになり、図鑑を眺めては「いつかこれらの作品を実際に見てみたい」と憧れを募らせていました。2011年から2018年までイタリアのフィレンツェで過ごし、フィレンツェ大学で博士論文を書きました。
京都の伝統文化も緑あふれる自然も大好きです。休日に神社仏閣を訪ねて歴史に触れたり、賀茂川(あるいは鴨川)を散歩したり、植物園でピクニックをしたりのんびり本を読んだりするのは至福のひとときです。
高校生へのメッセージ
私は昔から、何かに興味を持つととことん熱中するタイプでした。学生時代には専門の西洋美術史以外にもおもしろそうだと思った科目をたっぷり履修しましたが、いま振り返ると、さまざまな「自分の好き」が私の研究の個性を形作ってきたのだと確信しています。大学にはいろいろな科目が開講されています。ぜひ、自分の興味のアンテナが反応した授業をのぞいてみましょう。大学4年間はみなさんの可能性と個性を開拓する充実した期間です。ぜひ「好きなこと」、「おもしろいと思うこと」、「大切だと思うこと」を存分に追求してください。