研究テーマ
ベネデット・クローチェとその周辺知識人、近代日本におけるクローチェ受容史、17世紀を中心としたナポリ王国史
高校生に向けた研究内容の紹介
クローチェはファシズムに屈することなく反論した思想家として知られています。大学機関に所属せず、20世紀のイタリアで大きな発言力を持ちました。その膨大な著作はいまもナポリ史、イタリア史、文学・哲学研究の礎となっています。イタリアの文化を学ぼうとしたとき、どの分野においてもかれの名前を目にします。そして、かれの思想はヨーロッパに、日本に広まっています。そのクローチェの学問を受けとめながら、イタリア、ナポリに生きた人々の思想と行動を描こうと考えています。[ヨーロッパ思想・文化史研究会]
[ヨーロッパ思想・文化史研究会]
17世紀、南イタリアの歴史から今を生きる指針を見いだす
ゼミのテーマは「周縁から見た地中海世界~17世紀ナポリを中心に~」です。高校までの世界史は主に覇権国家を取り上げますが、光の当たらない周辺国から歴史を眺めた時、私たちは何を学べるのか。17世紀、沈みかけたスペイン帝国の体制下にあった南イタリアのナポリ王国は、言論抑圧、利権争い、内乱、ペストの流行などで国情は混沌としていました。ゼミでは近代化の優等生であるイギリスやフランスとは異なる道を歩んだ国の姿、厳しい状況下にあったナポリの人たちの営みを明らかにしていきます。そして「国のあり方と個人の生き方」という現代に通じる課題を、ナポリ王国の中に見いだすことができます。イタリア語に長けた学生は最新の文献を原語で読破し、学問の最先端にいる高揚感に包まれています。
ゼミ/卒業研究の紹介
ゼミのテーマは毎年変わりますが、ヨーロッパの思想・文化史を対象にしています。テキストは前人未到の世界に分け入る新鮮さを味わえるものを選んでいます。また、二次文献や教科書ではなく原典ないしは同時代史料を扱うので、暗中模索する醍醐味も感じられるはずです。文章を通じ時間と空間の離れた世界に触れると、自明のことが自明でなくなります。こうして学んだことが卒業後役に立つかどうかは正直分かりません。ただ、関心のあることを調べ抜いた経験は大きな糧になるでしょう。
プロフィール
東京出身です。高校時代からイタリアに憧れを抱き、大学時代には地中海の国々を訪れるようになりました。卒業後はイギリスで日本人学校の教師をしたり、イタリアに留学したり、日本ではいろいろな仕事をしました。結局、趣味だったヨーロッパの歴史と思想のお勉強が仕事になりました。休暇はおもにヨーロッパで過ごしています。何十回と行き来するなか、もっとも密接な関わりをもった街がナポリです。古代以来、地中海文明の一翼を担ってきたこの街にいると、五感が研ぎ澄まされます。
高校生へのメッセージ
私たちの内面世界は自由です。一見世の中の役に立ちそうにないものを掘り下げるのはそこそこ楽しいです。ただ、自分の脳で考え、誰も書いていない文章を紡ぎ出すにはコツコツと積み上げていく努力が必要です。そして、その積み上げたものは裏切らないと信じています。とはいえ、お勉強だけに集中できる時間は限られています。明日何が起こるかなど誰にもわかりません。だから、しばらくは現代的意義や有用性は少し脇に置いて、自分の関心に身を委ねてはいかがですか。