海外渡航プログラムを実施しました!
京都産業大学イノベーションでは海外渡航プログラムとして、2026年8月、本学学生5名と大石喜久男教授、伊藤慎一郎准教授がベトナム・ホーチミン市を訪れました。
今回の研修で大切にしたのは、現地で実際に見て、人と出会い、自分の言葉で問いかけることです。企業、大学、スタートアップ支援機関、地域コミュニティ、JETROを巡りながら、急速に変化するベトナムの社会や文化、経済、ビジネスをさまざまな角度から体感しました。訪問先で得た気づきが次の訪問先での問いにつながり、学生たちの視野が少しずつ広がっていく研修となりました。
卒業生とつながる「KSUデー」から始まった、新しい挑戦
ホーチミン市で活躍する本学卒業生との出会いと交流を中心とした研修初日を「KSUデー」と名付けました。学びの場を京都からベトナムへ移し、卒業生と在学生が世代や国境を越えてつながる、今回の研修の幕開けにふさわしい一日となりました。

Sango Technologiesで卒業生起業家と交流
KSUデーの最初の訪問先は、本学卒業生の野間悠磨さんが経営するSango Technologiesです。野間さんから、東京、上海、ホーチミン市での勤務経験や、起業、資金調達、組織経営、AIによる仕事の変化などについて伺いました。順調な経験だけでなく、海外で組織を率いた際の挫折や、そこから再び挑戦した歩みも率直に語っていただきました。
野間さんの話から学生たちが受け取ったのは、最初から正解を知っている必要はないというメッセージでした。周囲と比べるのではなく、過去の自分なら選ばなかったことに一歩踏み出すこと。完璧な準備を待つのではなく、まず試してみること。その言葉は、これから進路やキャリアを考える学生たちに強く響きました。
後半には、学生が屋内ナビゲーションサービスのアイデアを発表しました。利用者をどのように絞り込むのか、操作をどこまでシンプルにできるのか、商業施設や店舗にはどのような価値があるのか。現地で事業を展開する卒業生との対話を通して、アイデアは「便利な機能」から「誰に、どのような価値を届けるのか」という事業の視点へと深まっていきました。
参加した学生は、「何事も挑戦してみなければ始まらないこと、すぐに動ける今だからこそチャンスがあることを学びました。学生のうちに、まず行動してみたいと思います」と振り返りました。
ホーチミンのスタートアップ企業を視察
先輩方から教えていただいた注目のスタートアップにも、早速足を運びました。ホーチミン市は、日本人だけでなく、さまざまな国の起業家にとっても可能性に満ちた市場です。IT分野に限らず、食、教育、物流、ヘルスケアなど、多様な業種で新しいビジネスが次々と生まれています。
今回訪れたのは、フランス人起業家が立ち上げた、ベトナム産カカオを現地で加工・販売する地産地消型の高級チョコレートブランドです。増加する富裕層を主な顧客とし、店内には多彩な商品が並んでいました。現地スタッフを中心とした生産体制や品質管理、販売の様子まで見学し、地域の素材と人材を生かして付加価値の高い商品を生み出すビジネスの仕組みに触れました。

フランス人起業家による地産地消型のチョコレートブランドを訪問し、商品づくりや品質管理、販売の様子を見学
起業家として活躍する卒業生から刺激を受けた後は、京都産業大学同窓会サイゴン支部「サイゴン神山会」の皆さまとディスカッション。ベトナムで企業経営や物流、金融、食品など幅広い仕事に携わる卒業生から、現地での仕事や暮らし、異なる文化を持つ人と働くためのコミュニケーションについて伺いました。

サイゴン神山会の皆さんと、ベトナムでの仕事やキャリアについて意見交換
学生からは、ホーチミン市の将来や成長産業、海外で働くために必要なことなど、次々と質問が寄せられました。卒業生の皆さまは一つひとつの質問に丁寧に答え、自身の経験を惜しみなく伝えてくださいました。夕食会でも会話は尽きず、海外で働くことやキャリア、大学時代の経験へと話題が広がりました。
学生たちは、海外で働く道は一つではないこと、異なる文化の中では暗黙の了解に頼らず、自分の考えを言葉で明確に伝えることが大切であると学びました。Creative Co Working Spaceでのディスカッションから、サイゴン神山会との交流、夕食会まで、学びとつながりが広がった「KSUデー」。京都から遠く離れたホーチミン市で、卒業生と在学生が世代を越えてつながり、「神山の絆」を深める一日となりました。
対話から広がった、ベトナムへのまなざし
卒業生との対話を通して海外で働く姿を思い描いた学生たちは、次に、同世代が暮らすベトナムの日常へと目を向けました。ホーチミン市人文社会科学大学(USSH)では、現地学生と5つのグループに分かれ、ディスカッションとプレゼンテーションを行いました。

ホーチミン市人文社会科学大学の学生とディスカッション
話題は、方言や食文化、SNS、EC、AI、アルバイト、就職活動、交通、昼寝の習慣など、大学生にとって身近なものばかりです。互いの日常を持ち寄って言葉を交わすうちに、違いだけでなく、意外な共通点も次々と見つかりました。統計や資料では見えにくいベトナムの暮らしが、同世代の言葉を通してぐっと身近なものになりました。
交流は大学訪問だけでは終わりませんでした。プログラム後に一緒に食事や買い物を楽しみ、帰国後もSNSで連絡を取り合う学生もいます。学びの場で始まった会話が、国境を越えた新しい友情へとつながっています。
参加した学生からは、「違う国の人であることを忘れ、本当の友達のように接することができました。これからもSNSでつながり、また会える日を楽しみにしています」との声が寄せられました。
人との対話からベトナムの日常を知った後は、新しい事業や技術が生まれる現場を訪れました。SIHUB(Startup & Innovation Hub of Ho Chi Minh City)では、アイデアの段階から試作、市場投入まで、スタートアップの成長に合わせた支援が行われています。単に起業を応援するだけでなく、社会課題や行政課題とスタートアップを結び付け、実際の事業化へつなげる仕組みに、学生たちは強い関心を寄せました。

SIHUB(Startup & Innovation Hub of Ho Chi Minh City)を訪問
意見交換では、本学学生がSIHUBを拠点に活動することや、学生のアイデアをベトナム市場で検証すること、日越の学生やスタートアップが共同でプロジェクトに取り組むことなど、今回の研修の先につながる可能性も語られました。

ホーチミン市のスタートアップ支援について学びました
街の中心から周縁へ。歩いて見つけた都市の現在と未来
企業や支援機関でベトナムの成長とイノベーションに触れた学生たちは、Bình Quới地区で、その成長の別の側面を見つめました。水上バスから見える高層ビル群は、進むにつれて緑豊かな水辺や低層住宅の風景へと変わっていきます。同じホーチミン市の中にある多様な表情を、移動そのものを通して感じました。

Bình Quới地区のシュタイナー自然学校村へ
地区内では、自然を生かした教育、地域の食文化、廃材の再利用、上下水道や廃棄物処理の課題などを見学しました。植物に触れ、果実や蓮の実を味わい、生のココナッツからジュースを飲む。企業や大学の会議室とは異なる環境で、五感を使いながら地域の暮らしに近づきました。

フレッシュココナッツジュースを味わいながら、地域の食文化に触れました
一方、この地域では大規模な都市開発が計画されています。目の前に広がる自然や暮らしと、計画図に描かれた未来の都市。その二つを見比べたことで、都市の成長を単に発展として捉えるのではなく、何が新たに生まれ、何が変わり、何を残していくのかを考える時間となりました。
実際に街を歩いた学生は、「観光地とは異なる日常の街で、現地の暮らしを自分の目で確かめることができました。インターネットで調べるだけでは分からないことがたくさんあると実感しました」と振り返りました。
研修の最終日には、JETROホーチミン事務所を訪問しました。人口約1億人を擁し、成長を続けるベトナムの経済、貿易や投資、日本企業の進出、労働市場、スタートアップの動向について説明を受けました。
それまで学生たちが街や企業、人との交流を通して感じてきたベトナムの勢いが、経済データや企業動向によって裏付けられていきます。現地で見た風景、起業家から聞いた話、大学生との会話、地域で感じた課題が、ここで一つの大きな社会の動きとしてつながりました。
学生からは、「街で感じたベトナムの発展を、客観的なデータから理解することができました。海外でビジネスをするには、その国の仕組みやルールを知ることが大切だと感じました」との声が寄せられました。
女性社会起業家の実践から学ぶFabLab Saigon
FabLab Saigonでは、女性社会起業家として活動するMai Nguyen氏とDai Duong氏から、ものづくりや教育、地域との協働を通じた社会課題への取り組みについて伺いました。今回の訪問は、デジタルファブリケーションの設備や技術を見学するだけではなく、お二人が地域の人々と関係を築きながら、身近な課題から新しい価値を生み出す実践を学ぶ機会となりました。学生たちは、「何を作るか」だけでなく、「誰のために、なぜ作るのか」を考えることの大切さに触れました。

Bình Quới地区のフィールドスタディはFabLab SaigonのMai氏とDai氏の案内で実施
一歩踏み出した経験を、次の挑戦へ
今回のプログラムで学生たちが出会ったのは、成長を続ける都市や新しいビジネスだけではありません。挑戦と挫折を重ねてきた卒業生、自分たちと同じように将来を考える現地学生、アイデアを形にしようとする起業家や支援者、変化の中で暮らしを営む地域の人々との出会いがありました。
プログラムを終えた学生からは、「日本とベトナムの違いにビジネスの可能性を感じた」「完璧な準備を待つのではなく、まず行動したい」「海外で働くことや将来のキャリアに対する見方が変わった」といった声が寄せられました。

ベトナムで得た新しい視点とつながりを、次の挑戦へ
現地へ足を運び、自分の目で見て、人と出会い、言葉を交わす。そこで得た一つひとつの気づきが結び付き、学生たちの中に新しい視点と、次の一歩を踏み出す力が生まれました。
今回の学びとつながりを生かし、今後も学生が世界に目を向け、新しい可能性に出会えるプログラムを展開していきます。