2026.08.26

地域の未来を考える 法学部「地方自治未来論」で和歌山県知事 宮﨑 泉氏が講演

和歌山県知事 宮﨑 泉氏

法学部専門教育科目「地方自治未来論」(担当教員:山田 啓二 教授)にて、和歌山県知事の宮﨑 泉氏をお招きし、人口減少社会における地域課題や和歌山県の取り組みについてご講演いただきました。宮﨑氏は、地方自治の現状と今後の展望について、具体的な事例を交えながら解説してくださいました。

(学生ライター 文化学部 4年次 向井 優)

宮﨑氏は、1982年に和歌山県庁へ入庁後、教育委員会教育長や副知事を歴任され、2025年6月に和歌山県知事に就任されました。長年の行政経験を生かし、「笑顔あふれる和歌山」を理念に、持続可能な地域づくりに取り組まれています。

和歌山県の特徴と課題

講演では初めに、和歌山県の特徴について紹介がありました。和歌山県は森林資源に恵まれ、みかんや柿、梅などの果樹栽培が盛んな地域です。また、白浜や那智の滝、熊野古道など、多くの観光資源を有しています。
一方で、人口減少や高齢化の進行など多くの課題も抱えています。宮﨑氏はこうした課題への対応として次の3つの施策を挙げられました。

  • 人口減少社会における地域インフラの維持
  • 地域の人手不足への対応
  • 和歌山県の優位性を活かした取り組み

まず、人口減少と超少子高齢化社会に直面する地域インフラ維持の施策について述べられました。人口ピラミッドの形状が大きく変化し、高齢者1人を現役世代1人で支える構造へと移行しつつある現在、地域を持続的に維持することは大きな課題となっています。特に和歌山県では、県北部への人口集中と県南部の過疎化が進行しており、地域格差への対応が求められています。

地域インフラ維持の課題としては、少子高齢化に伴う税収の減少に加え、インフラの維持管理を担う職員の不足が深刻化している点が挙げられます。また、利用者が減少しているにもかかわらず、サービス水準を維持するためには従来と同等のコストが必要という構造的な問題もあります。こうした状況は、特に交通、医療、公共施設といった生活基盤において顕著に現れています。
こうした課題への対応策として、宮﨑氏は「水平連携」と「垂直補完」という2つの考え方を紹介されました。市町村同士が広域で連携する「水平連携」、そして単独では実施が困難な事業を国や県が補完する「垂直補完」を組み合わせることによって、持続可能な行政サービスの実現を目指しているとのことでした。あわせて和歌山県の財政状況についても触れながら、地方自治体が直面する現実的な課題を解説されました。

実例などを踏まえ、講演いただいた

続いて、人手不足への対応についてお話がありました。地域では資格を要する職種を中心に人材不足が深刻化しています。その解決策としてデジタル技術の活用が進められています。農業分野でのドローン活用といった省力化に向けた取り組みが進展しているほか、エッセンシャルワーカーの育成・確保にも力を入れているそうです。また、外国人材の活躍にも大きな期待を寄せていると述べられました。

和歌山県の強み

さらに、和歌山県の強みを生かした取り組みについても紹介されました。和歌山県は県土の約8割を森林が占めており、その特徴を生かして「伐って、使って、植えて、育てる」循環型林業を推進しています。また、林業は事故の多い産業であることから、安全性向上のために機械化も積極的に進められています。
加えて、GX(グリーントランスフォーメーション)戦略や洋上風力発電事業、さらには日本初の民間ロケット発射場を活用した宇宙産業の振興など、新たな産業の創出にも力を入れていることが紹介されました。特に人口減少が進む県南部地域において、将来の地域活性化につながる取り組みとして期待されています。

宮﨑氏は、他県知事との交流で得た知見や地域の具体的な事例を交えながら、地方自治の現状と課題について分かりやすく説明してくださいました。また、担当教員の山田教授とのやり取りを通じて、和歌山県にとどまらない広い視点から地方自治のあり方を考える機会となりました。学生たちにとっても、人口減少社会における地域づくりの課題と可能性への理解を深める有意義な講義となりました。