国際関係学部3年次生 浦田 望実
2026年7月27日(月)と28日(火)にかけて、クロスゼミの3年次生13名が東京でフィールド・ワークを行いました。クロスゼミでは、戦後復興を阻む対人地雷や不発弾問題について、これまでゼミ内で議論を重ねてきました。今回のフィールド・ワークでは、外務省やJICAを訪問し、対人地雷に関する条約や地雷除去支援について日本外交の観点から学ぶとともに、不発弾処理にも携わるウクライナ国家非常事態庁(SESU)の職員の方々と交流する機会を得ました。

1日目の7月27日には、外務省軍縮不拡散・科学部通常兵器室の飴谷貴信氏より、対人地雷禁止条約に関する外務省の役割と外交方針について講義を受けました。
講義では、地雷が「障害物」として紛争の長期化を招くだけでなく、安価に大量散布できることから民間人に深刻な被害をもたらし、「人道上の無差別性」が問題視されていることを学びました。そして、このような現実を背景に、オタワ・プロセスを経て対人地雷禁止条約が採択された歴史について説明していただきました。
また、日本が締約国として負う義務や、対人地雷除去に関する日本の基本方針についても学びました。日本は、①当事国の主体性強化、②新興技術の活用、③WPS(女性・平和・安全保障)との連携、④条約の普遍化の4つを柱として取り組みを進めています。その一方で、条約には未加盟国が存在することや、自律型致死兵器システム(LAWS)など新たな兵器の開発が進んでいることから、国際的な規制には依然として課題が残されていることも理解しました。

2日目の7月28日には、地雷除去ロボットを開発するIOS株式会社代表取締役の今井賢太郎氏、JICA地雷対策専門家の浅田義教氏による講義に加え、ウクライナ研修員向け講義の見学と研修員の方々との意見交換を行いました。
まず、IOS株式会社の今井社長から、地雷除去ロボット「DMR」の開発についてお話を伺いました。IOS株式会社は地雷問題に特化した事業を展開しています。地雷事故の背景には、経年変化や降雨によって地雷の向きが変わり、手作業による除去中に爆発する危険性があるという構造的課題が存在します。そこで開発されたDMRは、最も危険な掘削工程を担い、地雷を爆発させることなく掘り出すことで作業時間の短縮と安全性向上を実現しています。最新機種では遠隔操作も可能となり、地雷の位置や向きを可視化しながら作業できるようになっています。
さらにIOS社では、地雷除去だけでなく、地雷原跡地でのウチワサボテン栽培やプラスチックのアップサイクルなど、除去後の地域開発にも取り組んでいます。「負の土地を正の土地に変える」という考え方のもと、ビジネスを通じた国際貢献の一端に触れることができました。

続いて、JICAの地雷対策専門家である浅田氏から、国際協力の現場での経験についてお話を伺いました。浅田氏は本学文化学部の卒業生であり、在外公館派遣員としての活動を皮切りに、在ラオス日本大使館やUNDPでの勤務など、現在に至るまでのキャリアについて紹介してくださいました。不安や迷いを抱えながらも、一歩ずつ経験を積み重ねてこられたことが伝わり、国際協力の仕事が決して特別な人だけのものではないことを感じました。
また、さまざまな支援活動に携わる中で、支援の成果を実感しにくいもどかしさもあったといいます。現在専門とされている地雷対策の現場では、深く埋設された対戦車地雷が探知しにくいことや、避難先で生活基盤を築いた住民が元の土地へ戻れなくなるなど、地雷除去だけでは解決できない構造的課題が存在することを学びました。支援には、コミュニティを分断することなく住民のニーズを取り入れる姿勢や、どこまで技術移転を進めるかを見極める判断が求められます。「国際協力とは、人と人との間に信頼をつくる仕事である」という言葉が特に印象に残り、問題解決の基盤には信頼関係があることを実感しました。

最後に、ウクライナ国家非常事態庁(SESU)職員に対する、日本のジェンダー状況やWPS-NAP(女性・平和・安全保障行動計画)に関する講義を見学し、その後、研修員の方々との意見交換を行いました。
SESUは災害対応に加え、ロシアによる侵攻によって国土に大量に残された地雷や不発弾の探知・除去を担う国家機関です。しかし、地雷除去に携わる人員に占める女性の割合は約19%、資格を有する女性除去要員は11%にとどまっています。SESUにおけるWPSの取り組みでは、1~2年目のインフラ整備、2~7年目の土壌・環境システム整備、7~10年目の人材育成という3段階の計画のもと、女性のニーズに配慮した職場環境の整備やバリアフリー化などが進められていることを学びました。
また、日本とウクライナはともに政治・経済分野におけるジェンダーギャップが大きく、ウクライナでも日本と同様に、復職後の賃金低下への懸念などから育児休業取得率が低い実態があることを知りました。意見交換では両国の産休・育休制度について話題となり、ウクライナでは法律によって産休126日、育休は子どもが満3歳になるまで取得可能であることを学びました。一方で、SESUにおける育休取得率は対象者44人中わずか2%にとどまっており、制度が整備されていても「取得しない」という選択が少なくない現状があることを理解しました。

今回のフィールド・ワークでは、外交、技術開発、国際協力の現場、そして当事国からの声という異なる視点から地雷問題について学ぶことができました。その経験を通じて、一つの社会課題が、外交や国際政治、工学技術、開発協力、さらにはジェンダーといった多様な要素によって成り立っていることを実感しました。
地雷除去は単に危険物を取り除く作業ではなく、被害を受けた土地とそこに暮らす人々の生活を再生するための長期的な取り組みです。そして、その基盤には人と人との信頼関係があります。地雷問題の複雑さと、その解決に向けた多角的な取り組みの重要性を深く学ぶことができた、非常に貴重な2日間となりました。
お忙しい中、貴重な機会を与えてくださった関係者のみなさまに、心より御礼を申し上げます。

