2026.08.07

日本を取り巻く国際環境の変化ー木ノ下1等陸佐による講演

国際関係学部の「安全保障論Ⅰ」(担当:河原地 英武教授)において、自衛隊京都地方協力本部長・木ノ下 憲一郎 1等陸佐をゲストにお迎えし、「日本を取り巻く国際環境~タイ王国防衛駐在官等の経験を踏まえて~」と題したゲスト講演会が開催されました。木ノ下氏は、自衛官としての知見に加え、タイ王国防衛駐在官として現地に赴任した経験を踏まえながら、日本を取り巻く安全保障環境や自衛隊の取り組み、タイでの活動を通じて見えてきた国際関係について解説されました。

(学生ライター 国際関係学部2年次 山下 真己)

講演を行う木ノ下 憲一郎 1等陸佐
河原地 英武 教授

講演冒頭では、自衛隊の駐屯地や階級制度について簡単な説明がありました。また、日本周辺地域の軍事動向を踏まえながら、日本を取り巻く安全保障環境の変化について解説されました。近年は、従来の軍事力に加え、宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域や無人機、情報戦を組み合わせた「ハイブリッド戦」と呼ばれる手法が広がりつつあり、戦い方そのものが大きく変化していると指摘されました。こうした情勢を踏まえ、陸上自衛隊では同盟国・同志国との連携強化や、宇宙・サイバー領域を含めた訓練の充実、装備品の共同開発・輸出入といった取り組みが進められていることも紹介されました。

講演会の様子

後半では、木ノ下氏自身がタイ王国防衛駐在官として赴任した経験が語られました。着任当時はクーデターによる軍政期にあたり、プミポン国王の崩御にも立ち会うなど、大きな転換期のタイを目の当たりにしたといいます。タイ王国参謀大学への留学中は、言語の壁に苦労しながらも現地の関係者と交流を深めたそうです。また、日本とは異なりタイでは軍の統帥権が独立しており、政府機関の要職にも軍関係者が就くなど、政治・経済の幅広い場面で軍が大きな影響力を持っていることや、徴兵制度をめぐる社会的な議論など、タイ特有の事情についても紹介されました。

質疑応答では、近年の防衛政策の変化に関心を持つ学生から質問が相次ぎました。特に、防衛装備品の輸出を制限してきた「5類型」の撤廃や、自衛官の待遇改善といった改革に関するものがありました。木ノ下氏は、装備品輸出の拡大に伴い、輸出先で万一装備品が使用された場合の責任のあり方について、国際人道法の観点からも適正な管理が不可欠であると述べました。また、待遇改善については、冷房設備の整備など生活環境の面で改善が進んでいる一方、自衛隊の課題として人材不足を挙げつつ、自衛隊の活動の幅広さをより多くの人に知ってもらいたいと語りました。


今回の講演を通じて、日本を取り巻く安全保障環境が急速に変化していることや、タイのように日本とは異なる政治的特徴を持つ国が存在することを学び、安全保障を考える際には特定の国や地域にとどまらず、幅広い視点を持つことの重要性を実感しました。また、装備品輸出や待遇改善をめぐる質疑応答を通じて、自衛隊が想像していた以上に幅広い活動を担っていることを知る、貴重な機会となりました。