2026.07.16

法学会 春季学術講演会「旧統一教会解散、その先へ。」〜他人事ではない宗教被害〜

2026年7月1日に開催された法学会 春季学術講演会では、リンク総合法律事務所の阿部 克臣 弁護士を講師に迎え、「旧統一教会解散、その先へ。」をテーマに講演が行われました。阿部弁護士は、全国霊感商法対策弁護士連絡会や全国統一教会被害対策弁護団の事務局として、長年にわたり宗教被害や消費者被害の救済に取り組まれています。会場には法学部の学生をはじめ、教職員や一般市民も参加し、満員となる盛況ぶりでした。講演では、旧統一教会問題の経緯や解散命令の意義、そして私たちが注意すべき勧誘の実態について解説されました。

(学生ライター 現代社会学部 4年次 朝倉 瑠菜)

ゲスト講師の 阿部 克臣 弁護士

旧統一教会問題とは

2026年3月、旧統一教会に対する解散命令が確定しました。旧統一教会は1954年に韓国で創設され、日本では1964年に宗教法人として認証を受けました。しかし、いわゆる「親泣かせ原理運動」や霊感商法、合同結婚式、高額献金など、長年にわたり社会問題となってきました。特に2000年代以降は高額献金による被害が深刻化しました。被害者の中には10年以上にわたって献金を続けたケースもあり、長期間関わることで自らを被害者と認識しにくくなる傾向があるといいます。また、本人だけでなく、家族の財産が献金に充てられるなど、周囲への影響も大きな問題となっています。

宗教法人の解散とは

今回の解散命令は、宗教法人法第81条に基づく措置です。これは宗教法人としての法人格を失わせる手続きであり、宗教団体そのものの活動を禁止するものではありません。宗教法人と宗教団体は別の存在であり、法人格がなくても宗教活動を続けることは可能です。
それでも解散命令には大きな意味があります。第一に、法人格に伴う税制上の優遇措置が失われることです。第二に、国がその団体の問題性を公式に認定したことを示す点にあります。過去にはオウム真理教や明覚寺に対しても同様の解散命令が出されています。

解散命令実現までの歩み

987年には全国霊感商法対策弁護士連絡会が設立され、被害者救済と解散命令の実現に向けた活動が始まりました。しかし、旧統一教会が刑事事件として有罪判決を受けていなかったことなどから、長年にわたり解散命令は認められませんでした。
その後も被害の実態を訴え続けましたが、社会的関心は次第に薄れていきました。阿部弁護士は、大きな社会問題を解決するためには世論の関心が不可欠であり、それがなければ裁判所や行政も動きにくいと強調されました。
転機となったのが2022年の安倍 晋三 元首相銃撃事件です。この事件をきっかけに旧統一教会と政治の関係、宗教被害の実態に再び注目が集まりました。阿部弁護士らは国会でのヒアリングや資料提供などを重ね、最終的に2026年3月の解散命令につながりました。

宗教二世問題と今後の課題

解散命令確定後は法人財産の清算手続が進められており、被害者救済が大きな課題となっています。さらに、信者の子どもである「宗教二世」の問題についても議論が続いています。国は、宗教的信念に基づく行為が場合によっては子どもへの虐待にあたり得る、と認めていますが、法的救済は依然として容易ではありません。現在も宗教二世による訴訟が続いています。

身近に潜む勧誘の危険性
「#春から○○大」に隠されたものとは

講演では、宗教被害は決して特別な人だけの問題ではないと指摘されました。精神的に落ち込んでいるときや人間関係に悩んでいるときは、誰もが被害に遭う可能性があります。まず親切に接して信頼関係を築き、断りにくい状況をつくることが典型的な勧誘手法だそうです。
その一例として紹介されたのが、SNS上で見られる「#春から○○大」というハッシュタグです。このタグが一部の宗教団体の勧誘活動に利用されるケースがあると説明されました。SNSの普及によって、対面でなくても勧誘が可能になり、若者が被害に巻き込まれる危険性は高まっています。
また、注意すべき勧誘の特徴として次の5点が挙げられました。

  • やけに親切である
  • 即断即決を迫る
  • 口止めをする
  • 小さな嘘が混じり始める
  • 当初聞いていた活動内容と異なる

勧誘を受けた場合は、断る、距離を置く、個人情報を教えないことが重要です。また、困ったときは団体内部の人ではなく、家族や弁護士など第三者に相談することが大切だと呼びかけられました。

消費者庁 消費者ホットライン 「188(いやや)」

全国共通で最寄りの消費生活センターや消費相談窓口につながります。
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講演を終えて

今回の講演を通じて、宗教被害は決して遠い世界の出来事ではなく、私たちの身近にも存在する問題であると学びました。私自身も「#春から○○大」というハッシュタグを目にしたことはありましたが、その背後に勧誘活動が潜んでいる場合があるとは知りませんでした。SNSによって誰もが容易につながれる時代だからこそ、若い世代も被害に遭う可能性があります。
「自分は大丈夫」と思わず、少しでも違和感を覚えたときには立ち止まり、信頼できる人へ相談することが重要です。宗教被害を他人事とせず、自分自身の問題として考える姿勢が求められていると感じました。