経済学部専門教育科目「社会デザイン特別講義」(担当:菅原 宏太 教授)では、経済学に関連する「ヒト・モノ・カネ・情報」の観点から社会課題に接近するデザイン手法を学修できる機会として、社会デザインを実践しているキーパーソンを講師として招き、取組みの経緯・苦労・成果など、また実践現場から考える日本の社会経済のあり方について、それぞれの視点からお話しを伺います。今回は、「遊びと学びとまちづくり」をテーマに、シェアビレッジ株式会社代表取締役社長の丑田俊輔氏をお招きし、地域とのつながりを生かしたまちづくりや新たなコミュニティ形成についてご講演いただきました。
(学生ライター 現代社会学部 4年次 朝倉 瑠菜)
つながりがうみだす「新たな資本」
丑田氏は大学2年次の時、インターンシップで東京都千代田区にて中小企業を営む方のもとで活動する機会を得ました。そこで関わったのが、赤字運営に悩む公共施設の再生プロジェクトです。施設を地域にとってより良い場所へとリノベーションするためには多額の費用が必要でしたが、従来の方法だけでは資金調達が困難でした。
そこで着目したのが、人と人とのつながりという「資本」の力です。地域の様々なご縁を通じてつながった中小企業の経営者らが「自分たちのまちのためなら」と資金提供に協力したことで、必要な資金が集まりました。この経験を通じて、丑田氏はお金だけではない新しい資本のあり方を実感したといいます。その場所は、日本で最初期のシェアオフィス「ちよだプラットフォームスクウェア」としてひらかれ、施設内には飲食店や交流スペースが設けられ、新しい働き方や人々の交流をうみだす場となりました。
丑田氏は、私的な領域と公的な領域の間にある「Common(共)」(地域コミュニティや住民同士のつながりを意味する)の重要性を指摘し、人と人とのつながりが地域社会を支える大きな力になると語りました。
五城目町で広がる地域づくりの実践
30歳で秋田県五城目町へ移住した丑田氏は、人口約7,000人の町でさまざまな地域づくりに取り組んできました。廃校となった校舎をシェアオフィスとして活用し、地域活動の拠点としています。開設して間もない頃には、地域の企業たちで廃材などを持ち寄り、体育館を子どもたちの遊び場として開放することで、遊びを通じて保護者同士や地域企業とのつながりが生まれたといいます。地域づくりの中でも象徴的な取り組みが、解体予定だった茅葺き古民家の再生です。高齢化によって維持管理が難しくなる中、地域外に住みながらも町に愛着を持つ人々に着目しました。参加者は年会費(丑田氏は、「年貢」と表現しています。)を支払うことで、地域の祭りや屋根の葺き替え作業などに参加でき、観光では味わえない地域との深い関わりを持つことができます。その結果、毎年1,000~2,000人が訪れる新たなコミュニティが形成されました。
さらに五城目町では、クマの出没増加や林業の担い手不足といった課題にも向き合っています。丑田氏らは、伐採から製材、加工、組み立てまでを地域内で行う仕組みづくりに挑戦しました。その取り組みから誕生したのが「森山ビレッジ」です。子育て世帯や二拠点生活者の住居、宿泊施設として活用されるほか、収益の一部を森林へ再投資する循環型の仕組みが導入されています。また、AIを搭載したカメラによる野生動物の行動調査や、地元企業によるドローンの実証実験の検討も進められています。「自然というアナログな環境と最新技術を組み合わせることで、新たな可能性が生まれている」といいます。この他にも、町の中では、若い世代や子育て世代が参加しやすい「ごじょうめ朝市plus+」の開催、住民主体による学校づくり、高校生や地元住民による温泉再生など、さまざまな挑戦が続けられています。こうした実践を通して丑田氏は、「暮らしている人一人一人が無理なく関わることで豊かな町になり、空き家や山といった余白に、ワクワクや遊び心が加わることで新たな事業が生まれる」と語りました。
講義を終えて
今回の講義を通して、地域づくりは住民だけが担うものではなく、その地域に関わりたいと思う人々とのつながりによって支えられていることを学びました。人口減少や過疎化が進む日本において、地域外の人々とも関係を築きながら地域の魅力を高めていく取り組みは、今後ますます重要になると感じました。また、丑田氏が語られた「一人一人が無理なく地域に関わることが豊かなまちにつながる」という言葉が印象に残りました。私自身も地域のイベントや広報誌などを通して身近な地域について知り、できることから関わっていきたいと思います。