共通教育科目「ジェンダー平等と多様性」のゲストスピーカーとして、京都府男女共同参画審議会長で京都産業大学名誉教授の伊藤 公雄(いとう きみお)先生をお招きし、「男性主導社会の転換点を前に~DE&Iはなぜ必要なのか」をテーマに講義が行われました。本講義は人権と社会や組織の活性化という2つの視点から、男性主導社会が形成された歴史的背景と、現代の日本社会が抱える課題について解説されました。
(学生ライター 国際関係学部 2年次 岡本 倫太朗)
ゲストの伊藤先生は、日本における男性学研究の先駆者として知られています。
DE&IとはDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)の略であり、企業だけでなく大学など教育・研究の場でも重視されています。講義の冒頭では、DE&Iの必要性について、「人権」と「社会や組織の活性化」の2つの観点から説明がありました。人権の観点では1970年前後を境に、「すべての人は対等な存在として扱われるべきである」という価値観が世界的に広がり、人権問題が人類共通の課題として認識されるようになったとされています。また、近代以前の社会では地域や身分によってジェンダーの役割が多様であり、近代国家の形成と産業化の過程で、男性主導社会が構築された歴史的経緯について説明がありました。
私が特に印象的だったのは、日本の戦国時代に関する話です。当時は男性が料理や育児を担う例もあり、ヨーロッパから来日した宣教師が、日本の女性が男性に従属していない様子に驚いたという記録が紹介されました。日本が一貫して男性主導社会であったわけではないことが分かります。
一方、社会や組織の活性化の観点からは、女性役員の割合と企業業績の関係を示す調査結果が紹介されました。さらに日本では1970年代から80年代に確立した「男性の長時間労働」と「女性の低賃金パート労働」という性別分業の構造が、社会や経済を活性化させ、日本はそこから転換できなかったことが、少子化や経済停滞の一因になっている可能性が指摘されました。また、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数2025において、日本が148カ国中118位という低い順位に位置している現状も紹介され、ジェンダー平等への取り組みの遅れが社会的・経済的な課題と直結していることが示されました。講義の最後には、ジェンダード・イノベーションの重要性についても説明がありました。スーツケースのキャスターやシートベルトの設計など、男性主導社会の中で見過ごされてきた発想や技術の例が紹介されました。
質疑応答では、「男性学が目指すのは男らしさをなくすことか、それにとらわれない社会を目指すことか」という質問があり、「固定的な男性性にとらわれない社会を目指すことが重要である」とし、ジェンダー平等は女性だけの問題ではなく、社会全体のあり方に関わる課題であることが強調されました。


講義の中で特に印象に残ったのは、「ジェンダー平等とは性差を無視して男女を全く同じに扱うことではなく、性別による違いに配慮しつつ差別や偏見から自由になることである」という指摘です。ジェンダー平等の本質を正しく理解し、推進していくことの重要性を改めて感じました。多くの資料と自身の研究活動を交えたお話を通して、ジェンダーに対する考え方が変わった学生も多かったのではないかと思います。ジェンダーや社会の仕組みに関心のある学生はもちろん、将来の日本について考えている学生にもおすすめしたい講義でした。