2026.07.07

「希望を事業へデザインする」方法とは

アミタホールディングス株式会社 未来デザイン本部 篠原七子 氏

経済学部の専門教育科目「社会デザイン特別講義」(担当教員:菅原宏太 教授)では、「ヒト・モノ・カネ・情報」の観点から社会課題に接近するデザイン手法を学び、また、社会デザインに携わる外部講師を招き、取り組みの経緯や苦労、成果に加え、実践現場の視点から日本社会のあり方について、講義を受ける機会を設けています。今回は、アミタホールディングス株式会社 未来デザイン本部の篠原七子 氏をお招きし、「希望を事業へデザインする」というテーマのもと取り組みの背景や実践内容について講演いただきました。

(学生ライター 現代社会学部3年次 今西 梨緒)

「ありたい未来」を願望のままで終わらせない

篠原氏は、大学卒業後に2社を経験したのち、アミタホールディングス株式会社に合流されました。社会に存在するさまざまな問題を「外側から眺めているだけではないか」という違和感を抱いていた時期に『ソウル・オブ・マネー』 (リン・トゥイスト著)という本に出会い、「社会は私たち自身がつくり出しており、その中に存在する問題もまた私たちが生み出している。」という気づきを得たといいます。この気づきを起点に単なる問題解決にとどまらず、その先にある「希望」を実現することを目指し、現在も取り組みを続けておられます。

また、同社は「この世に無駄なものはない」という信念のもと、約50年前から産業廃棄物を天然資源の代替原料とする100%再資源化事業に取り組まれています。その後も、森林や水産資源の持続可能性を可視化する環境認証審査サービスや、企業の環境管理に伴うリスクとコストを最適化するクラウドサービスなど、「実現が難しい」とされてきた理想の事業化に挑戦し続けています。
金融資本に依存した価値創出が主流となっている現代社会において、同社は「発展すればするほど自然資本と人間関係資本が増幅する社会」の実現を掲げ、「希望」を事業として具体化しようとしています。

※アミタグループでは、一般的な「入社」を「合流」と表現しています。ミッションに共感し、共通の目標を目指して進むという決意を込めています。

MEGURU STATION®で「やりがい」を循環させる

現在、同社が展開している「MEGURU STATION®」は、互助・共助型のコミュニティを基盤とした資源回収拠点であり、国内外7地域19か所に展開されています。この施設は、コミュニティスペースやおすそわけスペース、マルシェボックススペース、資源回収スペースといった4つの機能から構成されており、住民一人一人の中にある潜在的な余剰(得意や好き、「やりたい」という気持ち、一人で過ごしている時間など)を引き出し、それぞれが役割を持って関わることのできる地域の新しい拠点となっています。
その拠点では、駄菓子屋の開催や編み物・そろばん教室など住民の得意や関心を生かした活動が行われており、利用すればするほど愛着が深まる場への発展を目指しています。その結果、資源循環の意識が高まるだけでなく、参加者の健康意識や幸福感が向上する効果が少しずつ現れています。奈良県および福岡県内の3地域では、要介護リスクの低下や介護費用の削減につながっていることが学術機関との共同研究で明らかにされています。

学生との質疑応答をする篠原 氏

質疑応答の際、今後のステップアップについて問われた篠原氏は、「まずは事業として成立させることが重要である」とした上で、現場に蓄積されたデータの活用によってさらなる最適化を図りたいと語られました。

希望が未来を創る

講義の最後に篠原氏は、「希望が未来を創るために大切なこと」について次のように語られました。「自分が抱いている違和感や願いを、『自分だけの問題』として閉じてしまわないことが重要です。それは社会全体の課題の縮図であり、新たな可能性を生み出すきっかけになるかもしれません。」さらに、「できるかどうか」ではなく「どうやるか」に焦点を当てて行動する姿勢の重要性を強調されました


今回の講義を通じて、日常の中のささいな違和感に目を向け、それを問いとして捉え直すことの重要性を学びました。そして、その問いを他者と共有し、行動へとつなげていくことが、社会をより良い方向へと変えていく契機になるのだと感じました。