
経営学部の専門教育科目「経営戦略論(全社戦略)」(担当:柴野 良美准教授)では、企業全体としてとるべき経営戦略の理論や概念を学びます。また、企業や第一線で活躍する実務家の講演も取り入れ、経営戦略の理解を深めます。
今回の授業では、フェムトパートナーズ株式会社の創業者でありゼネラルパートナーの磯崎 哲也氏をゲストにお招きし、スタートアップの魅力や成長戦略についての講演が行われました。
(学生ライター 法学部 2年次 山岡 由茉)
黎明期のネットビジネスからベンチャーキャピタル設立への軌跡
まず、磯崎氏のキャリアについて紹介されました。大学卒業後、発足したばかりの長銀総合研究所に入社し、経営コンサルタントとして経営戦略の策定や新規事業開発に従事されました。その中で黎明期にあったインターネットビジネスに触れ、未来の巨大な発展の兆しを感じます。その後、カブドットコム証券(現、三菱UFJ eスマート証券)の立ち上げに参画され、スタートアップの資金調達の難しさと、それを乗り越えた先にあるビジネスの魅力に気付きます。独立後はスタートアップ経営者への助言業務を行い、「資金調達とアドバイスの両面から挑戦者を支援したい」という強い思いから、投資事業(ベンチャーキャピタル業)を開始し、今のフェムトパートナーズを設立します。[TI1.1]現在は、起業準備から事業化の初期段階であるシード・アーリー期のスタートアップを対象とした投資・支援業務の最前線で活躍されています。
スタートアップの本質と「期待値最大化」の戦略
続いて、スタートアップの本質やファイナンスの仕組みについて解説されました。磯崎氏は「起業に必要なものは、大きなビジョンである」とし、スタートアップの本質は「急速な成長を目論むこと」であり、早期の黒字化や目先の利益を求めて手堅くまとまってしまうと、社会にイノベーションを起こすような大きな成長は望めないと言います。世界的な巨大企業にまで成長するスタートアップは、初期に巨額の先行投資(赤字)をいとわず、優秀な人材の獲得やユーザー基盤の拡大に全力を注ぐことで、将来の圧倒的な利益へとつなげてきました。こうした「失敗できる力」を支えるために最適な手法の1つとして、株式による資金調達である「エクイティ・ファイナンス」の話をされました。その具体的な仕組みの一つとして「ストック・オプション」が挙げられました。これは「現在の株価で、将来その会社の株式を購入できる権利を従業員に与える仕組み」です。これにより、働くメンバー全員の意識が「企業価値の向上」へと揃い、一体感を持って経営に参画できるようになります。
磯崎氏は、スタートアップの最重要戦略は「企業価値を高めること」であり、そのためには成功の「確率」を追うのではなく、「確率 × リターン」である『期待値』を最大化することが大切であると強調されました。魅力的な未来の姿を明確に、そして説得力を持って提示できれば、未来への期待値から現在の資金を集めることができる(タイムマシン)と話されました。
次世代を担う学生たちへのエール
最後に、「自ら起業することも素晴らしい挑戦だが、関わり方はそれだけではない。急速に伸びているスタートアップに飛び込むことで、単に大企業に勤めるよりも遥かに重要な仕事を早期に任され、圧倒的なスピードで成長できる。スタートアップと仕事をする、スタートアップに投資をする投資家側に回る、等、いろいろな関わり方があるので、ぜひチャンスを見つけてチャレンジしてほしい」と、次世代を担う学生たちに向けて熱いエールが送られました。
今回の講演では、スタートアップの本質を「期待値最大化」という視点から捉え、挑戦を後押しする考え方と具体的な資金調達の仕組みが示されました。磯崎氏の実体験に基づく話は、学生のキャリア観を広げるとともに、将来への挑戦意欲を高める貴重な機会となりました。
講師紹介
磯崎 哲也(いそざき てつや)氏
フェムトパートナーズ株式会社 ゼネラルパートナー
大学卒業後、長銀総合研究所に入社し、経営コンサルタントやアナリストの経験を経て、カブドットコム証券(現、三菱UFJ eスマート証券)の立ち上げに参画。その後、ネットイヤーグループCFO、カブドットコム証券社外取締役、ミクシィ社外監査役、中央大学法科大学院兼任講師などを歴任。フェムトパートナーズ株式会社を創業し、ゼネラルパートナーとして主にスタートアップ企業に対する投資や助言業務を行う。公的な研究会や審議会の委員も多数務める。著書『起業のファイナンス』『起業のエクイティ・ファイナンス』は、スタートアップ経営者のバイブルとして計10万部を超えるベストセラーとなっている。近著に、総務・経理・労務・法務からEXITまでを網羅した『起業のコーポレート業務』(監修)がある。