2026年5月27日(水)、国際関係学部で開講している「国際政治入門」において、赤十字国際委員会(ICRC)駐日代表を務められている榛澤祥子氏をゲストに迎え、紛争地におけるICRCの活動や国際人道法の意義についてご講演いただきました。

ICRCとは
ICRCは、1863年に創設され、国際連盟(※1920年設立)よりも長い歴史を持つ組織で、その本部はスイス・ジュネーヴに置かれています。私たちが病院の名前として知っている日本赤十字社といった各国赤十字とICRCは異なる組織ですが、国際赤十字・赤新月社連盟とともに、世界最大の人道ネットワークを構成しています。重要な点として、ICRCは、国連のような国際機関ではありませんが、ジュネーヴ諸条約で役割を与えられているため、一般的なNGOとも一線を画す独自の地位を持っています。
ICRCの活動
ICRCの職員は、イスラエル・パレスチナ被占領地域やウクライナなど世界各地の紛争地で活動しています。その際重要なのは、公平で中立、かつ独立した組織として行動するという人道的使命で、ICRCは、紛争当事者のどちらの側にも立たないことで紛争当事者の信頼を得ています。そして、その信頼に基づき、ICRCは、捕虜の訪問といった保護、国際人道法の普及といった予防、そして生活必需品の提供といった支援活動を行っています。榛澤氏自身も、エチオピアで軍と協議して一般の人々が医療にアクセスできるようにしたり、ウクライナで捕虜を訪問したりしたとのことです。

国際人道法―戦争にもルールがある―
ICRCは、国際人道法の普及にも尽力しています。国際人道法とは、1949年のジュネーヴ諸条約を中心とした法体系です。この国際人道法は、過去の悲惨な戦争から得られた教訓に基づき、戦争中に守られるべき最低限の人間性を確保するために重要なルールです。特に、国際人道法の違反は、憎しみの連鎖を生み出すため、国際人道法を守ることは将来の平和にもつながります。しかし、昨今の紛争では、病院への攻撃といった形で、国際人道法が違反されたり、反対に暴力を正当化するために利用されたりすることもあります。また、AIの利用により人間の判断を介さずに攻撃を行えるようになることで、アカウンタビリティーをどのように確保するのか、AIが間違った判断をしたらどうなるのかといった問題もあります。
また、ICRCは、防衛省や自衛隊とセミナーを開いたり、大学生向けに国際人道法ロールプレイ・模擬裁判大会を開催したりすることで、日本においても国際人道法を普及しています。

中立の仲介者
紛争中には、敵でも味方でもない、中立の第三者が必要になる場面があります。そういった場面で、ICRCは、紛争地において中立の仲介者として活動することがあり、たとえば、紛争当事者の立場や評価(テロリストであるか)にかかわらず、人道的な観点からすべての当事者と対話を行います。さらに、紛争当事者が停戦を協議するための場所を提供することもあります。
おわりに
国際法は、大学での講義を受けていると、どこか「自分には関係ない遠い世界の出来事」のように感じてしまうこともあるかもしれません。しかし、今回講演していただいた榛澤氏は、国際人道法を使って紛争の犠牲者を1人でも減らすように日々尽力しており、まさに「国際法を使って国際社会で働く人」です。授業後、多くの受講者がキャリアや国際的に働くために必要なことなどについて榛澤氏に相談していました。多くの学生にとって、今回の講演が、国際法をはじめとする国際関係学の知見を活かしてキャリアを切り拓く道があることを知り、日々の学びに向けたモチベーションを高めるきっかけとなることを期待しています。