2026.06.09

社会デザイン特別講義「問題」を「チャンス」に変えて ~NSW×HONESTIESの独創性~

「問題」を「チャンス」に変えて
~NSW×HONESTIESの独創性~


経済学部の専門教育科目「社会デザイン特別講義」(担当:菅原宏太教授)では、経済学に関連する「ヒト・モノ・カネ・情報」の観点から社会課題に接近するデザイン手法を学修できる機会として、社会デザインを実践しているキーパーソンを講師として招き、取組みの経緯・苦労・成果など、また実践現場から考える日本の社会経済のあり方について、それぞれの視点からお話を伺います。 第6回の授業では、NSW株式会社およびHONESTIES株式会社 代表取締役社長 西出 喜代彦 氏 をお招きしました。経営環境が大きく変化する中、地方企業がどのように自らのビジネスに新たな価値を生み出しているのか。事業転換の背景やビジネスモデル、社会課題への貢献について紹介します。泉州の地域資源を起点に、食品事業からアパレル事業へと展開された革新的な挑戦に迫ります!

(学生ライター 経済学部 1年次  山中健太郎)

■ 斜陽産業からの挑戦 ― 事業転換の背景

NSW株式会社はもともとワイヤーロープ製造を主力とする企業であり、長年にわたり地域産業を支えてきました。しかし市場縮小により従来事業の将来性が課題となり、新規事業への転換が求められ、その中で着目したのが泉州の特産品である水なすでした。西出氏の地元・泉州への思いと、ご家族の「ピクルスは酸っぱくて味がきつくて苦手」という一言から、地域資源を活かした商品開発が始まりました。

■ いずみピクルスの誕生と成功

水なすピクルスは多くの試行錯誤の末に誕生し、保存性・見た目・健康価値を兼ね備えた商品として人気を集めました。規格外野菜の活用により、フードロス削減にも貢献しています。ただし、規格外野菜をすべて商品化しているのではなく、しっかりと地元農家と協力し、中でも品質の良いものを使っているため、味は折り紙付きだそうです。

■ 社会課題とビジネスモデル

食品ロス問題や健康志向の高まりに対応し、NSW株式会社では農業・製造・販売を一体化したD2C(Direct to Consumer)モデルを展開しています。このモデルでは、生産から販売までを自社で管理することで、中間コストを抑えつつ、商品開発や改良を迅速に行うことが可能になります。また、規格外野菜や余剰野菜を活用することで、従来であれば廃棄されていた資源に新たな価値を与えており、フードロス削減にも大きく貢献しています。

現在、日本では年間数百万トン規模の食品ロスが発生しているとされており、その多くが野菜や果物で占められています。このような課題に対して、ピクルスという保存食の形で価値転換を行う取り組みは非常に合理的です。また、単なる食品販売ではなく、農業・製造・販売までをつなぐ「垂直統合型ビジネス」である点が特徴的であり、地域経済の循環にもつながっています。

さらに、SNSやECサイトを活用することで、顧客の反応を直接取得し、それを商品改良に生かせる点も大きな強みであり、社会課題の解決とビジネスの成長を同時に実現している点に、現代のネット競争を勝ち抜いてきた企業のあり方が垣間見られます。

■ 服も会社も「HONEST」な事業

食品事業に続いて展開されたHONESTIES事業は、「裏表のない服」という非常にシンプルでありながら革新的なアイデアから生まれています。日常生活において多くの人が無意識に感じている「裏表を間違える」「確認する」という手間に着目し、それをなくすことで時間とストレスの削減を実現している点が特徴的です

特にこの製品は、高齢者や認知症の方、発達障害のある子どもにとって大きな価値を持っています。例えば、服の裏表が分からずに着替えに時間がかかってしまい、一時的、瞬間的に感情が高ぶってしまうなどといった問題を解消されることで、自立した生活を支援することにつながっています。また、介護現場においても、着替えの介助が容易になることで、介護スタッフの負担軽減や業務効率の向上が期待されています。

さらに、「裏表がない」という構造は、洗濯や収納といった家事の効率化にもつながり、日常生活における時間の無駄、いわゆる「タイムロス」の削減にも大きく寄与しています。このように、HONESTIESの製品は単なる衣服ではなく、生活の質(QOL)を向上させる製品なのです。

■ 実証と評価

HONESTIESの製品は、実際の介護現場や施設において実証実験が行われており、その効果が数値として確認されています。例えば、着替えにかかる時間が大幅に短縮されたり、介護スタッフの負担が軽減されたりするなど、具体的な成果が報告されているそうです。このようなデータに基づいた評価は、製品の信頼性を高める重要な要素になります。

また、これらの取り組みは社会的にも高く評価されており、さまざまなビジネスコンテストやアワードで受賞していることからも、その革新性が認められていることが分かります。さらに、大学や医療機関との連携による研究も進められており、科学的な根拠に基づいた商品開発が行われている点も重要です。

単なるアイデアの商品ではなく、「実証→改善→展開」というサイクルを回している点において、非常に完成度の高いビジネスモデルだといえるでしょう。

■ まとめ(所感)

今回の講義を通して印象に残ったのは、地域の課題を「問題」として捉えるのではなく、「チャンス」として捉えている点です。泉州という地域にある水なすや繊維産業といった資源を活用したり、食品とアパレルという異なる分野で新しいビジネスを生み出していたり、またフードロスや高齢化社会、介護問題といった現代の社会課題に対して、実際に解決策を提示している点が非常に意義深いと感じました。特に「裏表のない服」のように、日常の小さな不便を解決するアイデアが、大きな社会的価値につながるという点は、自分自身の将来の進路を考えるうえでも参考になりました。

今回の内容から、ビジネスとは単に利益を追求するものではなく、社会に役立つ価値を創出するものであることを学ぶことができました。このような視点を今後の学びや就職活動にも活かしていきたいと思いました。