経済学部「社会デザイン特別講義」(担当教員:菅原 宏太 教授)では、経済学に関連する「ヒト・モノ・カネ・情報」の観点から社会課題に接近するデザイン手法を学修できる機会として、社会デザインを実践しているキーパーソンを講師として招き、取り組みの経緯・苦労・成果など、また実践現場から考える日本の社会経済のあり方について、それぞれの視点からお話しを伺います。今回の授業では財務省近畿財務局から白井真氏、福嶋咲穂氏、若杉麻美氏の3名をゲストスピーカーとしてお招きした特別講義を実施しました。講義では、「近畿財務局の地域連携の取り組み」「フューチャー・デザインの推進に係る取り組み」「学生のための金融リテラシー講座」をテーマにお話しいただきました。
(学生ライター 文化学部4年次 向井 優)
「地域の声を聞く」財務局が取り組む地域連携とは
白井氏からは「近畿財務局の地域連携の取り組みについて」と題し、財務局の役割や地域連携の取り組み、大阪・関西万博での活動ついてお話いただきました。
財務局は財務省の総合出先機関かつ金融庁の委任機関として、全都道府県に拠点があり、地方公共団体、教育機関、金融機関、民間企業など地域の主体と業務上密接な関係にある点が特徴です。地域連携の取り組みについては、地域のニーズを起点に「つなぎ役」として課題解決に取り組む姿勢を重視しており、地域の声を直接把握しやすい立場にあることが大きな強みであると述べられました。具体的な地域連携の取組事例として、宇治市の学校給食センター設置に係る国有財産の有効活用、地方公共団体での国有財産管理処分に関するノウハウ提供や財政研修、さらに本学での金融リテラシー向上を目的とした特別講座などが紹介されました。
また、近畿財務局では主に若手・中堅職員の有志で構成された「ちほめん」(地方創生企画推進メンバー)が中心となり、部門横断的に連携支援やセミナー開催などを展開しています。特に大阪・関西万博においては、財政・金融経済教育をテーマにTEAM EXPOパビリオンに出展したほか、企業・金融機関・地方公共団体などの声を丁寧に拾い上げ、万博参加を促進するセミナーや、展示・出展構想等に対して知見者から助言を得るイベントを実施しました。さらに、アフター万博の取り組みとして、万博のテーマに関連する分野での公民連携を促進するピッチイベントを開催するなど、多面的な支援を実施されたそうです。白井氏は、「財務局の取り組みは常に地域の声を起点としており、地域のニーズに寄り添いながら連携を図り、その働きかけによって地域が動き出す瞬間に大きなやりがいを感じる。」と述べられました。
未来人の視点で今を見つめる『フューチャー・デザイン』
続いて、福嶋氏からは「フューチャー・デザインの推進に係る取り組み」と題し、フューチャー・デザインの基本からその意義についてお話いただきました。
講義の中で、学生たちは実際にフューチャー・デザインの手法を体験し、それぞれが望む未来を描いたうえで、現代で取り組むべきことを考えました。福嶋氏は、未来の視点を取り入れながら多様な立場の人々と対話し、意見を共有することが、より良い社会をデザインすることにつながると述べられました。フューチャー・デザインとは、将来世代の幸せを願い、その実現を目指すことで私たち自身も幸福を感じられるという「将来可能性」の考え方を基に、未来の視点から社会のあり方を考える取り組みです。未来にタイムスリップしたつもりで将来世代の立場から現代へメッセージを送るという手法を用いることで、「今のうちに~しておこう」というアイデアの発掘になります。財務省でも持続可能な社会づくりの一環としてこの手法を推進しており、「はじめてのフューチャー・デザイン」というWebサイトも公開しています。
正しい知識で身を守る──学生のための金融リテラシー
続いて、若杉氏からは「学生のための金融リテラシー講座」と題し、クイズを交えながらさまざまな金融トラブルの事例とその対策方法についてお話しいただきました。
若杉氏は、今後自分で資産管理を行う必要がある学生に向けて、「不要なトラブルを避けるためにも、お金に関する正しい知識と適切な判断力を身につけることが重要だ」と述べられ、そのうえで、クーリング・オフ制度やクレジットカードの支払い方法、銀行口座に関する注意点など、学生でも身近に起こり得るトラブルをクイズ形式で紹介されました。そして、トラブルを未然に防ぐために大切なポイントとして、次の4点を挙げられました。
- 「簡単に儲かる」「あなただけ特別」等の言葉を簡単に信じない!うまい話なんてありません。
- 怪しいと思ったら一度冷静になって考える。
- 自分がきちんと理解できる金融商品しか買わないと決めておく。
- 普段から財政・金融・経済に関する正しい知識を身につけるよう心掛けること。
若杉氏は、注意していてもトラブルに巻き込まれることはあり得るため、その際は一人で抱え込まず、必ず誰かに相談することが大切だと強調されました。
今回の特別講義を通じて、近畿財務局が取り組む多様な活動について理解を深めるとともに、社会と未来、そして自分自身のあり方を見つめ直す機会となりました。普段は曖昧にしてしまいがちな社会への関心を、具体的に“デザインする”視点から考えることができたのではないでしょうか。