共通教育科目「ジェンダー平等と多様性」は、ジェンダーや国籍、価値観、障がいの有無などさまざまな違いを尊重しながら、公平性(エクイティ)や包摂性(インクルージョン)の視点について学びます。今回の講演は「お笑いとジェンダー平等:ボケとツッコミで考える、多様性と偏見」をテーマに、お笑い芸人として活躍されている「フランポネ」マヌー島岡氏(吉本興業所属)をお招きし講演いただきました。
(学生ライター 現代社会学部 4年次 朝倉 瑠菜)
今回講演いただいた島岡氏は、妻であるスイス人のシラちゃんと「フランポネ」というコンビを組まれています。2人が行うお笑いを通じた社会課題解決とはどんなものなのでしょうか。
「フランポネ」のプロフィール
「フランポネ」吉本興業所属(NSC出身)
マヌー島岡さん、妻のシラちゃんによる国際夫婦コンビ。英語・フランス語・スペイン語など多言語でネタを作成し、芸人の視点で日本を元気にする仕組みを考え、お笑いを通じてマイノリティに対する偏見や差別、教育格差、貧困などの社会問題を、ソーシャルビジネスとして解決することを目指し活動しています。
漫才で外国語を学習する時代に!?
講演ではまず、「漫才で日本語を学ぶ」というユニークな教育手法が紹介されました。
結婚を機に来日されたスイス出身のシラちゃんが日本語学校で経験した文法中心の授業に疑問を感じたことがきっかけとなり、NSC(吉本養成所)での「話す力」を重視した訓練を教育方法に応用されたそうです。
この手法では、ひらがなを使った優しい日本語や、言い間違いを活かしたネタを使うことで、外国人の方でも簡単な漫才が出来るようになり、学習者が自然に「読む、書く、聞く、話す」の四技能を身につけることができます。また、日本語のほかにも英語、フランス語、スペイン語でも応用されています。
漫才は「サッカー型」のコンテンツだといえるそうで、野球がアメリカや一部のアジアで主に親しまれているのに対し、サッカーは全世界で広く普及しています。同様に、コントとは異なり、小道具が要らない漫才は場所や条件に左右されにくく、「MANZAI」として世界中に広まる可能性を持っています。
また、教育・福祉・地域振興など多様な分野に応用できることから、漫才は「ソーシャルビジネス」としても注目されています。
福祉と漫才
日本には現在、およそ963万人の障がいのある方が暮らしています。しかし、その人々がお笑いに関わる機会はほとんどありません。また、障がいのある方の平均賃金は極めて低い現状があります。この現実を踏まえ、フランポネは障がいのある人や外国人を対象にした漫才大会「D(Diversity)-1」グランプリを開催し、エンターテインメントとして発信することで収益化を図り、その収益を参加者へ還元するという取り組みを東京都豊島区、兵庫県姫路市で実施、これまでに25組をM-1へ輩出するなど成果も上げています。重度の障がいのある方でも「なんでやねん」「もうええわ」といったツッコミのフレーズを紙に書いて用意することで漫才を可能にしました。
社会課題解決に向けて
日本は現在労働力不足という社会課題を抱えています。これまで労働を担ってきた人々だけでは十分とは言えず、外国人や障がいのある人の力がますます重要になっています。実際に、人口の約10%を外国人が占める地域も現れ、さらに50人に1人は障がいのある人が雇用される時代が到来しつつあります。フランポネは、漫才を通じてこうした多様な人々の相互理解を促し、共生社会の実現を目指しています。
講演を終えて
漫才を経済学や社会学の視点から見ることが初めてで新鮮でした。お笑いは人を笑顔にするためにあるだけではなく、教育や福祉、多文化共生といった社会課題にアプローチできる有効な手段であることが分かりました。既存のものから新たな価値を生み出すことは簡単なことではありません。最後に島岡氏が問いかけられた「お笑いを通じた社会問題の解決、あなたなら何が出来ますか」という問いについて、私も考えてみたいと思います。