現代社会学部専門教育科目「地域社会とメディア」(担当:脇浜 紀子教授)は、地域社会におけるメディアの役割や、今後の展望に焦点を当て、メディアが地域社会の活性化や地方自治の形成に果たす役割について論じることを目的としています。本日はゲスト講師としてメディアコンサルタントの境 治氏をお招きし、「メディアの現状と課題」についてお話を伺いました。
(学生ライター 現代社会学部 3年次 町野 航汰)
オールドメディアの現状
授業冒頭、境氏はテレビや新聞など、いわゆるオールドメディアと呼ばれるメディアの今後について、解説しました。業界の分析によるとテレビや新聞は視聴時間、購読者ともに減少傾向にあり、インターネットの利用時間は大幅に増加しています。人口構成から見ても、団塊ジュニア世代以降はネット世代であり、10年後にはオールドメディア人口の急減は避けられないと指摘しました。
ネットメディアの課題
オールドメディアからネットへの移行は進んでいるものの、ネットがニュースの確かな受け皿になっているとは言えません。
SNS広告の不健全性、さらに生成AIによるMFAサイト(広告収入を目的とした低品質または価値のないコンテンツで構成されたウェブサイトの)の増加など、ネットメディアにも問題があると説明しました

報道機関間の対立
NHKの「ネット業務必須化」(これまでNHKのインターネット配信は「任意業務」でしたが、改正放送法により「必須業務」に変更され、テレビ放送と同様に継続的・安定的な提供が義務付けられた)に対して、新聞協会・民放連が反発し、記事が短期間しか公開されないなど、報道機関同士の対立が続いています。こうした状況は、『国民の知る権利』を損なう深刻な課題であると指摘しました。
ニュースを自衛するために
最後に境氏は、情報社会を生き抜くためには「ニュースを自衛する力が必要である」と強調し、
・情報を自分で判断する力を持つこと。
・知りたいことは自分で調べて発信すること。
・お互いに発信しあう仕組みを作ること
この3点を挙げ主体的な情報行動の重要性を説きました。
オールドメディアは衰退し、インターネットも問題が多い。そのため、情報を自衛するしかない。そのためにはマスコミもネットもまず疑う必要がある。「疑問に思ったことを調べ、情報発信し周囲と共有する。それがこれからのメディアのあり方になる。」と授業を締めくくりました。
授業を受け、私たちは今、時代の転換点に立っていると感じました。完全に中立なメディアはこの世に存在せず、情報には必ず発信者の意図が含まれます。そのため、情報を疑い、自分で判断する力を身につけることが不可欠です。私は学生ライターとして授業の情報を載せる原稿を作成する際も、取材し、自分で感じたことなどを交えて書いています。境氏の言葉を受け、情報を『受け身』ではなく『主体的』に扱う姿勢をこれからも持ち続けたいと強く思いました。