2025.12.16

ゲストスピーカー 株式会社ポーラ社長 小林 琢磨氏の4つの転機。顧客のライフタイムバリューを第一に。

経営学部の専門教育科目「経営戦略論(事業戦略)」(担当:柴野 良美 准教授)では、経営戦略の中でも事業の目標達成のためにとるべき戦略である事業戦略について、さまざまな視点から学びます。今回は、株式会社ポーラ代表取締役社長の小林 琢磨氏をゲストスピーカーとして迎え、これまでのキャリアと経営に対する考え方について語っていただきました。

(学生ライター 現代社会学部3年次 町野 航汰)

ゲスト講師の小林氏

小林氏は、化粧品会社である株式会社ポーラに新卒で入社後、社内ベンチャーを立ち上げました。その成功を経てオルビス株式会社の代表取締役に就任し、2024年、株式会社ポーラの代表取締役社長に就任されました。異例ともいえるキャリアを歩まれてきた小林氏の人生における4つのターニングポイントを振り返りながら、事業の成長と再生のヒントを探る講義となりました。

ターニングポイント1

小林氏は株式会社ポーラ入社当初、主力ではない部署に配属されました。小さな部署であったからこそ、すべての業務に関わることができたと語り、この経験が最初のターニングポイントになったと振り返ります。また、「売り込み先の経営者に対して、交渉プロセスをすべて学んだ営業職の経験は、自分のマーケティングの基盤となった」と述べ、「自社商品を売り込み先にどう評価してもらうかを考え、行動していた」と語られました。

講義を聞く学生の様子
ターニングポイント2

その後、社内ベンチャー制度が設立され、敏感肌向け化粧品ブランド『DECENCIA』を立ち上げました。これが2つ目のターニングポイントです。当時の敏感肌向け化粧品市場は医薬品としての位置づけが基本で、敏感肌向け化粧品の市場シェアを持っていなかったこともあり、売り上げが悪い期間が続いたそうです。この状況を打開するため、小林氏は「付加価値の高い商品」を目指して経営方針を転換しました。さらに、敏感肌を持つ方々、一人一人にインタビューを行い、「顧客理解が浅かった。顧客が何を求めているのかを知る必要があった」と振り返ります。この経験を通じて、顧客価値を最大化した商品開発に成功し、事業を軌道に乗せることができたと語りました。

ターニングポイント3

3つ目のターニングポイントは、思ってもみなかったオルビス株式会社の代表取締役への抜擢です。オルビス株式会社では、ブランドを一から見直す必要がありました。「ブランドを変えるということは過去を超えていくということ」。その改革には先代の役員の反対などもあり、「経営は人と向き合っていかないといけないと痛感した」と語りました。

ターニングポイント4

そして4つ目のターニングポイントは、2024年に訪れた株式会社ポーラの代表取締役社長就任です。「新卒で入社したポーラに社長として戻ってくるとは思ってもみなかった」と振り返り、「顧客が何を求めているのかを第一に考えること」「会社のある強みが何かを見極めること」が重要だと強調しました。

講義を行う小林氏

講義を通じて、このような経歴を持つ方から直接話を伺えることは、非常に貴重だと感じました。私たちは、今は商品を購入する立場にありますが、将来、商品を提供する側になった時、本当に顧客のためになるのかを考えながら経営をする必要があると強く思いました。小林氏が語った「顧客に喜んでもらう、結果として利益を得る」という言葉は、まさにビジネスの本質を表していると感じました。