2025.12.16

文化学部 近藤ゼミ 「東福寺」の学外演習で「不立文字」を体感する!――通常非公開エリアをいく

2025年12月13日、文化学部国際文化学科 近藤 剛 教授の「国際文化基礎演習B」(15人)「国際文化演習ⅠB」(12人)「国際文化演習ⅡB」(12人)において、臨済宗大本山東福寺での学外演習が実施されました。国際文化学科のゼミであることから、京都の神社仏閣を巡ることを敢えて控えてきましたが、来年度より文化構想学科へとリニューアルされ、学びの舞台である京都でのフィールドワークを充実させていくことから、今回は試験的な導入となりました。

近藤ゼミに所属する学生の研究対象は多種多様で、まさに多様性に開かれたゼミ運用を心がけていますが、主眼は「宗教リテラシー」の重要性を学ぶこと、「宗教的寛容」や「宗教的情操」を育むことにあり、実際の宗教の現場に赴くことは必要な学びとなります。

今回は、これまでにも講義科目「観光と宗教」でゲスト講師としてご指導いただいている明石碧洲師の全面的なご協力により、一般には非公開となっているエリアを中心に「東福寺の伽藍面」を網羅する特別な見学会を実施することができました。

最初に、庫裡にてお抹茶をいただきながら、明石師より臨済宗の教え、東福寺の歴史について説明を受けました。次に本堂(仏殿兼法堂)の内部に立ち入り、本尊の釈迦如来、天上の蒼龍図を仰ぎ見ながら、禅の教え、寺院の役割、建築にまつわる秘話など、拝聴することができました。学生からは数多くの質問が飛び出し、予定の時間を超えて、活発な質疑応答が行われました。事前学習も奏功したようでした。

庫裡にて説明を受ける近藤ゼミ一同

その後、国宝の三門の楼上内部に上がることが特別に許され、張り詰めた空間に圧倒されて一同が驚愕することになるのですが、深い霊性を体感することができたとだけ報告しておきたいと思います。この経験はまさに不立文字というべきことでした。

さらに方丈庭園にて、八相の庭、重森三玲のエピソードを詳しく聞き、通天橋から愛染堂、開山堂をめぐり、禅の思想、仏教芸術、仏教建築、国宝、重要文化財への学びを深めて、非常に充実した学外演習を終えることができました。参加学生の体験談を一部紹介します。

「今回のフィールドワークで私が得たのは、東福寺を「体で経験した」という感覚でした。厳しい寒さの中で法堂に入り、さらに国宝である三門の楼上にまで上がらせていただいた体験は、単なる知識ではなく体の記憶として強く刻まれていると思います。三門の上部が仏堂となり、釈迦牟尼仏や羅漢像、天井には極楽浄土が描かれている空間構成から、解脱を象徴する門と宗教的世界観が上下関係として重ねられているように感じました。また、明石先生の解説で、境内が桜ではなく楓に統一されている背景として、修行の場としての環境を保つ意図があったという話を伺い、禅の思想が教義だけでなく、空間や自然の選択にまで及んでいることを感じ取りました。絶対的な拠り所を立てず、その時々の関わりを引き受けるという禅の姿勢を、今回の演習を通して「生の体験価値」として受け取ることができたと感じています。」(学生談)

「今回のフィールドワークを通して、この先二度はないんじゃないかという体験をすることができました。間近で一般公開されていない国宝を見ることができることなんて絶対にないので、非常に貴重な体験をさせていただきました。私の中ではやはり三門を上がった所の「宝冠釈迦如来坐像」と「十六羅漢」が1番印象に残っています。近藤先生が懇親会でおっしゃっていたように非常に寒かったという肌から感じる体感によるものもあり、この先一生忘れることのない体験価値になりましたが、あの場所に入った瞬間に圧倒され、言葉が喉元に引っ込んでしまうような感覚になりました。普段、ご住職でも頻繁に足を運ばれる場所じゃなく、儀式の時に足を運ばれるという話からも、本当の神聖さを感じました。この先なかなかあの感覚になることはないだろうと思うので、あの感覚を味わえただけでも昨日のフィールドワークに価値があると感じるくらい有意義な時間でした。」(学生談)

立ち入りを許された空間が写真撮影禁止であったことは、とても幸いなことでした。今はスマホで何でも撮ることができますが、それでは簡単すぎます。撮影したデーターは残っていても、自分自身に(心身に)記憶されているのでしょうか。当日は厳しい寒さでしたが、その寒さとともに体感を通して得ることが大切なのであって、心に刻まれていく体験価値こそが本物なのではないかと思います。こうした学びを深める機会となったならば、幸いなことです。

徹底的に研究対象に向き合う(特に一次文献を繰り返し読み込む)ある意味で孤独な座学、共通テーマに対して仲間で取り組みプレゼンテーションを行うグループワーク、そして現場に赴いて実践的に学ぶフィールドワーク、これらを巧みに組み入れた運営が近藤ゼミでは行われていますが、新しい文化構想学科においても引き継がれていきます。さらに新しい研究手法も取り入れていく予定なので、文化学部の取り組みにご期待ください。