国際関係学部開講の「国際経営論Ⅱ」(担当:植原行洋 教授)は、企業が海外市場で事業を展開するための戦略の基礎を学び、企業経営の国際化・グローバル化を多角的に理解する思考力を育成することを目的とした授業です。今回は、日本貿易振興機構(JETRO)調査部国際経済課の宮島 菫 氏をゲストに迎え、日本を取り巻く国際経済情勢についてご講演いただきました。
(学生ライター 現代社会学部 3年次 町野 航汰)

転換期を迎える国際通商秩序
授業の冒頭、宮島氏は「国際通商秩序が転換期を迎えている」と指摘しました。
冷戦後に積み上げられてきたグローバル化や新自由主義の流れに基づく多国間協調主義が、近年の保護主義の台頭により崩壊の危機にあるとし、その要因の一つが、ニュースでもよく耳にする「トランプ関税」です。
「経済安全保障(経済安保)」とは
関税とは輸入品に課される税金で、自国産業の保護を目的とします。トランプ政権はこの関税を交渉のカードとして利用し、自国の利益拡大を図りました。当初は主に中国が対象でしたが、その後、日本を含む同盟国にも関税が適用されました。各国はアメリカ製品の輸入や対米投資額を増やすなどの条件を提示し、関税引き下げ交渉を行っている状況です。
さらに、宮島氏は最近のトレンドとして「経済安全保障(経済安保)」の考え方が注目されていると述べました。経済安保には次の2つの基盤があります。
- 戦略的自立性:他国に過度に依存しないこと
- 戦略的不可欠性:自国が他国にとって不可欠であること
米中の貿易摩擦などの覇権争いは一時より落ち着いていますが、日本企業への影響は続いており、先行きは不透明です。製造継続のためのサプライチェーン見直しや、軍事転用防止のための先端技術保護などが求められています。国際秩序を維持しようとする動きも強まる中、日本は中国・米国などの主要貿易相手国との関係を維持しつつ、その他の同志国やグローバルサウスとの連携強化、新たな販売先の開拓を進めています。
講義の最後に植原教授は「世界は今、従来の常識が通用しない時代になりつつある。情報を持っているかどうかで大きな差が生まれる」と述べ、情報収集の重要性を強調しました。
講義を聞き、日本を取り巻く国際経済情勢は新たな局面に立たされていると感じました。直近では、高市首相による「台湾有事」に関する発言で中国から、さまざまな措置が加えられています。これも一種の経済の武器化だと感じています。特定国に依存した経済ではなく、自国の産業を発展させつつ、新たな協力網を設けるなど、国際経済情勢に左右されすぎない基盤を持つことが肝心なのではないかと感じました。