現代社会学部の学部共通導入科目「現代社会の諸問題B」は、現代社会における課題を専任教員や学外の専門家から直接学び、問題意識を養うことを目的としています。今回は伊藤 公雄 先生(元本学現代社会学部客員教授)をゲストとしてお迎えし、「ジェンダー平等とは何か」をテーマに講義が行われました。
(現代社会学部 3年次 町野 航汰)
授業の冒頭、伊藤先生はコロナ禍で浮き彫りになった日本社会の課題について語りました。デジタル化の遅れ、少子化、ジェンダー平等の停滞、社会の多様化への対応不足など、以前から指摘されていた問題に十分な対策を講じなかった結果、日本はGGGI(グローバルジェンダーギャップ指数)で「世界148カ国中118位、(G7の中では唯一100位以下、圧倒的に最下位)」という順位にあるとし、「ジェンダー平等が停滞する日本社会を救う手掛かりになる」として2つの提案を示されました。
1つ目は、「固定的な男女の二項図式に基づく差別や排除の仕組みを撤廃すること」です。
印象的だった先生の言葉に「男女を機械的に『同じ』に扱えば『平等』なのか?」という問いがあります。
生物学的性差だけでなく、生理学的な違いへの配慮も必要であり、こうした考えの浸透によって男性主導の社会構造を根本から転換する必要があると語られました。

2つ目は、「ジェンダー平等によって生まれる多様性が、組織や社会を活性化させる」という認識を社会全体が持つことです。
日本企業では女性が「見えない存在」として扱われることもあり、ビロンギング(所属感、自分の居場所だと思える感覚)を持ちにくい現状があります。差別や排除によって発揮できなかった潜在力を引き出すために、社会を変えていく必要があると述べられました。
また、女性問題だけでなく、「男性問題」も深刻化しています。時代の変化に伴い、かつては「男」というだけで維持された権力は終焉を迎え、男性の間に剥奪感が広がっています。伊藤先生は女性対象のジェンダー政策だけでなく、男性対象の政策も必要であり、男性自身が意識や生活スタイルを見つめ直し、男性性(いわゆる男らしさ)に縛られた生き方を変えることが求められているとし、現代社会の問題解決の重要な鍵の一端は男性が握っていると強調しました。最後に伊藤先生は「ジェンダー平等社会とは二色刷りを単色=平等にするのではなく、多色刷りにすることだ」と語り、多様性の重要性を示しました。

講義を通じて、社会問題に向ける視点は1つでなくて良いと感じました。
女性問題の裏側に男性問題があるように、単一の対策ではなく、多様な視点が求められているのだと思います。社会を変えることは簡単ではありませんが、一人一人が自分とは立場・考え方が異なる人に向け理解をしようとする意識を少し持つだけで、目に見えない小さな変化が積み重なり、最終的に良い方向へ進むのではないかと感じます。私たちに必要なのは、自分と異なる考えや、立場の人を排除するのではなく、共に歩もうとする姿勢だと思います。