文化学部京都文化学科 中野 宏幸教授の「観光文化基礎演習B(2年次生)」は、11月24日、奈良県磯城郡田原本町のマルト醤油を訪問し、地域文化と価値共創の考え方を学ぶフィールドワークを行いました。マルト醤油は、日本の歴史のはじまりの地である大和国の中央部に位置する田原本において、1689年創業の醤油の醸造と伝統文化を「再発見」「発信」する取組を行っています。18代目当主で本学卒業生の木村 浩幸氏は、戦後の閉業から70年を経て、地域の協力の下に蔵元を再興しており、醤油醸造の再生と地域活性化の取組について、お話を伺いました。
マルト醤油正面玄関にて 右端ご当主 木村氏
マルト醤油の基本コンセプトは、「醤油蔵と旅人を育む、新たな居場所」です。地元産の小麦・大豆を使用し、伝統の天然醸造製法で醤油醸造を行い、風味豊かなほのかな甘さのある醤油を提供しています。さらに、「泊まれる醤油蔵」として宿泊客に対し、醤油づくり体験や古来より稲作を伝えてきた村屋神社への朝参り体験、古代大和を知る自転車ツアーなど「体験価値」を高める取組を行っています。
旅へのニーズが変化する中で、マルト醤油ではお客様とのコミュニケーションを大切にしており、訪問される方々により深く地域を理解していただくべく、蔵に残る古文書を紐解き、当時の姿を思い描きながら現在の活動に生かしています。これらのきめ細かな取組から、宿泊予約サイト「一休.com」では、近畿圏約1400の施設の中で、1位にランクされ、また、ミシュランガイド奈良においても、フードロス削減などの持続可能な取組を認定するグリーンスターを獲得するなど、高い評価を得ています。木村氏からは、京都産業大学の先輩として、学生時代ならではの経験に対するアドバイスをいただき、活発な意見交換を行いました。
大神神社の妃神を祀る村屋神社にて
大和川と三輪山を背景にして
今回のフィールドワークでは、五穀豊穣を祈る新嘗祭が行われている村屋神社を訪問し、また大和川沿いを散策しながら、木村氏より地域の歴史や地勢について説明をいただきました。田原本には、弥生時代の環濠集落である国史跡唐古・鍵遺跡があります。道の駅「レスティ唐古・鍵」では、木村氏からのご説明とともに、田原町本役場の前コーディネーターの林氏より、変貌しつつある旅行産業の動きや地域が主体となって体験や交流を提供する着地型観光のコンセプトについて説明をいただきました。
天然醸造の醤油を育んできた醤油蔵
木村氏の説明を熱心に聴く学生
学生からは、次のような声が聞かれました。
- マルト醤油において、地域との丁寧なコミュニケーションを重ねながら、何年もの時間をかけて価値ある商品をつくりあげていることに感銘を受けた。
- 先祖の意志を受け継ぎ、地元の大豆と小麦だけを使用し、歴史や人との関わりを何よりも大切にして経営をされていることがとても印象に残った。
- 地域と協働して経営していくには、母体となる人・団体がいかに熱い信念をもって、地域住民の方々の理解を得て、懐に入り込むかが重要とわかった。
- 木村氏の学生時代の経験をお聞きし、地元の観光業を盛り上げていくために、さまざまな地域に行って色々なものを感じ取り、今後に生かしていきたいと思った。
地域での体験を重ね、その土地の魅力を生かした持続可能な発展のコンセプトを創造してもらいたいと思います。