2025.10.21

「国際キャリア開発リサーチ(C2)」をパラオで実施しました ー(後編) 現地の人々との協働から見えたパラオ社会

国際関係学部 4年次 山本 悠斗 

3.共通プログラムでの経験と学び

 全体プログラムの中では、学生全員が参加する共通プログラムとして、バベルダオブ島研修、JICAパラオ事務所訪問、在パラオ日本国大使館表敬訪問、観光実習、そしてパラオの人々と過ごす余暇体験プログラムを実施しました。

バベルダオブ島での研修では、島をバスで巡りながら、日本統治時代の遺産や謎に包まれた古代石造物の見学、パラオ議会庁舎や伝統的な会議場バイの視察を通じて、パラオの歴史と文化を学びました。途中では、海辺のレストランでの昼食を楽しみながら、自然の豊かさや島の持つ多様な表情を体感しました。

観光実習では、日系旅行会社が催行するツアーに参加し、観光客としてパラオを訪れた場合にどのような体験が得られるのかを実地で理解を深めることができました。ガイドによる案内の仕方や安全管理、環境への配慮、観光客を楽しませる工夫などを観察し、観光業におけるホスピタリティとサステナビリティの両立について考える機会となりました。特に、サンゴ礁や島々の景観が持つ観光資源としての価値を実感し、現場での体験を通じてパラオの観光の魅力を多面的に理解することができました。実習後には、学生たちがツアーの運営や内容について現地ツアーオペレーターに対してフィードバックを行いました。観光客の視点から見た改善点や提案を共有することで、実践的な学びを現地社会に還元する機会ともなりました。

パラオの人々と過ごす余暇体験プログラムでは、現地の人々が週末にどのように時間を過ごしているのかを、学生たちが共に体験しました。一つの島に上陸し、バーベキューをしたり、海に入ったり、のんびりとランチを楽しみながら過ごしました。集まった人々が料理を持ち寄り、互いに分け合いながら浜辺で食事を楽しむというパラオならではの文化を体験し、さまざまなパラオ料理や地元の食材にも触れることができました。こうした経験を通じて、学生たちはパラオの人々の典型的な余暇の過ごし方やコミュニティの絆、自然との共生のあり方を理解する貴重な学びを得ました。

JICAパラオ事務所訪問では、現地で行われている国際協力の取り組みについて説明を受け、パラオでのJICAの活動内容や今後の展望を学びました。説明の後には学生から活発な質問があり、パラオの課題や国際協力の現場に対する理解を深める貴重な機会となりました。

在パラオ日本国大使館への表敬訪問では、学生がそれぞれのインターン活動について報告し、大使からコメントや助言をいただきました。質疑応答の時間も設けられ、学生たちは外交や国際連携の現場について新たな視点を得ることができました。

バベルダオブ島研修では伝統集会所を見学
観光実習ではツアーを体験しての学びや気づきをツアー催行会社にフィードバックしました
JICA職員に質問する学生
在パラオ日本国大使館にて折笠特命全権大使表敬訪問

プログラム終盤には、各学生が Palau Resource Institute(PRI、パラオプログラム受入協力NGO)やインターン受け入れ先の関係者、ホームステイファミリー、在パラオ日本国大使館のスタッフに向けて、約3週間の滞在を通じて得た成果を発表しました。学生たちは、ホームステイでの生活経験や2週間を超えるインターンでの実務経験と調査をもとに、パラオが抱える課題とその解決に向けた方策を提案しました。発表に対しては、現地の関係者から高い評価と温かいコメントが寄せられ、学生たちにとって自らの成長を実感する貴重な機会となりました。プログラムの最後には修了証授与式が行われ、各学生が修了証を受け取り、報告会は終始温かな雰囲気の中で締めくくられました。

報告会には職場関係者やホストファミリーが参加しました
報告会でインターンシップ修了証を受けとり職場の人々と記念撮影

現地での活動中、学生たちはコロール州やアイライ州に分かれ、それぞれ現地の家庭にホームステイしました。私は父母と3人の子どもを含む6人家族のもとで生活し、温かい時間を過ごしました。家族はダンスが得意な親戚と親しく、毎日のように親戚が家を訪れては食事を共にし、ダンスの練習をしていました。私も仕事を終えた後、彼らと一緒に食事や会話を楽しみながらダンスに参加し、自然と輪の中に入っていきました。生活の中では、踊りや会話を通じて日本の文化や言葉を紹介する一方で、家族や親戚からパラオの文化や生活習慣を学ぶ機会も多く、互いの文化を尊重し合う豊かな交流が生まれました。また、ホストマザーは地域で顔が広く、スーパーに買い物に行くと知人が次々と声をかけてくる姿から、パラオ社会の人と人とのつながりの深さを実感しました。休日には家族や親戚とともにバベルダオブ島のココビーチ(Coco Beach)を訪れ、海やプールで遊びながら食事や会話を楽しみました。貝殻を探したり、写真を撮ったり、プールで飛び込みやバレーボールをしたりして過ごした時間は、笑顔にあふれた思い出となりました。こうしたホストファミリーや親戚との関わりを通じて、私自身の中に深い絆が生まれただけでなく、パラオ社会の地理的特徴や地域コミュニティのつながり、そして文化や慣習の豊かさを学ぶ貴重な経験となりました。

ホストファミリーと一緒にCoco Beachへのピクニック

6.おわりに

帰国時の空港では、ホストファミリーの子どもたちや親戚の方々が最後まで温かく見送ってくださいました。親戚の方からは別れ際にプレゼントをいただき、心のこもった贈り物に胸がいっぱいになりました。また、職場の方々も空港まで見送りに来てくださり、私たち学生2人に記念の品をくださいました。出発の瞬間までホストファミリーや親戚、職場の皆さんと交流が続き、パラオにおける人と人とのつながりの深さを改めて感じました。

今回のパラオプログラムでは、学生たちが政府行政機関での業務を体験しながら各自のリサーチ課題に取り組み、成果を報告する構成で実施されました。さらに、現地での生活はホストファミリーとのホームステイを通して進められ、家庭での会話や地域との関わりの中からパラオ社会や文化について多くを学ぶことができました。3週間の滞在は、学問的な学びと生活の学びが一体となった貴重な経験であり、今後のキャリアを考える上でも大きな意味を持つ時間となりました。私自身もこの研修を通して多くの気づきを得て、自分の将来について考えるきっかけになりました。パラオという小さな国だからこそ、人々の絆は深く、互いに信頼し合いながら社会を支えていることを実感しました。ホストファミリーからは「いつでも戻ってきていいよ」と温かい言葉をかけていただき、いつかまた家族に会いに行きたいと思っています。

最後に、このプログラムを企画してくださった三田教授をはじめ国際関係学部の教職員の皆様、Palau Resource Institute(PRI)のスタッフの皆様、各インターン受け入れ機関、ホストファミリー、そして現地でお世話になったすべての方々に心より感謝申し上げます。このプログラムが今後もさらに発展し、学生と関係者の相互の学び、そして日本とパラオの交流がより深まっていくことを願っています。パラオ社会の多様な現場で得たこれらの経験は、学生一人ひとりにとって国際社会で生きる力を培う貴重な財産となりました。

帰国時にホストファミリーとその親戚達とのお別れ