京都産業大学経営学部では、学生が企画から制作までを手がける「CMプロジェクト」を実施しています。今年で6回目となる本プロジェクト。2025年度は、ソフトバンク株式会社から課題提供を受け、『「60」と「LINE」で伝える大学生活』をテーマに、高校生をターゲットとして、全9チーム・47人がCMを制作しました。今回は、LINEヤフー株式会社の「LINE」と京都産業大学創立60周年を記念した「60」を動画内に盛り込むという条件が設定され、学生が創意工夫し、取り組みました。7月2日、本学の神山ホールで開催されたCMの完成披露発表会では、特別ゲストとして、話題の大谷似翔平氏が登場。熱気あふれる、学生の晴れ舞台の様子を前後編に分けてお届けします
(学生ライター 法学部2年次 笹山 美咲)
開演前から会場には学生や教職員、関係者などが続々と集まり、期待と緊張感が入り混じる空気が漂っていました。経営学部長 篠原 健一 教授の開会の言葉の後、今年の審査員として以下の4人が紹介されました。
- 在間 敬子 学長
- LINEヤフー株式会社 事業開発部 部長 佐藤 将輝氏
- 大谷似翔平氏
- 映像プロデューサー シャンソン氏
司会進行は、本学法学部出身で現代社会学部客員教授を務める人気ラジオパーソナリティの谷口 キヨコ氏。学生たちのプレゼンを明るく、テンポの良い進行で盛り上げました。
チーム作品紹介
1.「ゼロヨン」
発表1チーム目は「ゼロヨン」です。
高校の卒業式の日に、恩師から「60は人が忘れずにいられる記憶の数」と言われてプレゼントされたカメラをきっかけに、孤独で将来に希望を持てなかった高校生の主人公が前を向き、大学でカメラを使い、学生生活の記憶を写真に残していきます。やがて成長した主人公は教師となり、恩師のように生徒へメッセージを贈るまでを描いた、ストーリー性の高い作品でした。
京都産業大学附属高校など、学外での撮影も多かったこの作品。学生からは、撮影やスケジュール調整、視聴者への伝え方に苦労したという声がありました。主演には、実際に女優経験がある方を起用しました。監督は、「限られた時間の中で、ストーリー性を持たせることにこだわった」と工夫を語りました。視聴者の心に響く作品となりました。
2.「大将の舎弟」
2チーム目は「大将の舎弟」です。
大学受験に向けて勉強をする高校生のもとに、大学生活を送る未来の自分から、60秒のLINEのビデオ通話がかかってくるというストーリー。今と未来の通話画面を横並びにし、未来の自分から、大学構内で販売している好物のクレープのキッチンカーの紹介など、学生生活の楽しさや、受験勉強へのエールが伝えられます。未来の自分との通話をきっかけに、主人公の高校生が将来へ向けて努力しようと思える内容となっています。
視聴ターゲットである受験生の高校生が共感し、大学進学へのモチベーションが高まるように画角や通話画面の演出について工夫を重ねたそうです。また、主演の学生より、高校生と大学生での表情やメイクの違いを出す工夫などが紹介されました。
3.「わらい」
3チーム目は「わらい」です。
テストに遅刻するという夢を見た主人公が、実際に寝坊してしまうというユーモアあふれるストーリー。諦めずに試験教室に向かい、現実世界ではなんとか間に合ってテストを受けることができたものの、その結果はいかに?
監督は「遅刻しても諦めず行動すれば未来は変えられる」というメッセージを伝えたかったと紹介がありました。このストーリーは、俳優役のメンバーの実体験が基になっており、台本をギリギリまで修正しながら撮影した緊張感なども語られ、楽しんで制作していた様子が伝わってきました。
4.「テれんデのテ」
4チーム目は「テれんデのテ」です。
人気番組のパロディ作品で、LINEのメッセージをきっかけに始まった賞金60万円をめぐる学生6人の逃走劇が大学構内で展開されます。本学の神山天文台の荒木望遠鏡など学内の特徴的な施設を活用し、視覚的にもインパクトのある作品となりました。
この作品では、京都産業大学の施設やキャンパスなどを高校生に紹介したかったそうです。また、字幕の大きさなど、視覚的に印象を残すための工夫も。チームは1・2年次生の合同で、1年次生メンバーからは「最初は意見を出すのをためらっていたが、毎日の話し合いで緊張がほぐれ、色々な意見を出せるようになった」と個人やチームの成長を感じさせるコメントもありました。
5.「はっしートリオ」
5チーム目は「はっしートリオ」です。
60歳になった先生が60kgを目指してダイエットに挑戦するというユニークな動画です。実際にチームの学生のゼミ担当教員である橋本教授が出演し、体育会の学生の指導の下、坂道を走ったりお菓子を取り上げられたりと、ユーモアを交えて健康管理の大切さと魅力ある教員がいることを伝えました。和やかな雰囲気の映像に、会場では笑いが起こりました。
学生たちはルッキズムに配慮しつつ、橋本教授の魅力と先生への愛を伝える映像づくりにこだわったとのこと。ダイエット指導役の学生は、陸上競技部所属であるという裏話も明かされました。
6.「ミンミンゼミ」
6チーム目は「ミンミンゼミ」です。
“幻の60号館”という京都産業大学の都市伝説をテーマにしたホラー系作品です。仲間とともにその謎に迫ります。暗い建物内で明かりが1つあり驚きますが、「その正体は、遅くまで学生のために頑張ってくれていた教員だった」という結末に。ホラーというジャンルでインパクトを狙ったこの作品。学生思いの教員がいることを見事にアピールしています。
メンバーの多くが初対面で、個性豊かなチームをまとめることにも苦労したそうです。監督の2年次生からは、「2年次生として1年次生の後輩を先導する良い経験ができた」という声も聞かれましたが、編集合宿などを通じて絆を深めた様子が、発表会では伝わってきました。
7.「美白」
7チーム目は「美白」です。
食品毒物混入事件から60日後、犯人の似顔絵が公開されるというニュース映像から始まり、犯人が実は身近なところに…というサスペンス仕立ての映画のCMのような動画です。全編一人称視点で進行し、血を吐くシーンも。リアルな恐怖感とミステリアスな演出が印象的な映像でした。
当日、学生たちは、サスペンスの雰囲気をイメージし、赤い衣装に統一して登場。「ホラー要素が自分たちに一番フィットすると感じた」とのことで、製作段階では、大学のプロジェクトとして「ここまでやって大丈夫か?」と何度も相談を重ねたとのこと。トマトジュースで表現した血を吐くシーンでは、衣装が1着しかなく、失敗できない緊張感の中で挑戦したそうです。一人称視点の映像で、どう犯人の正体を示すかなど、映像から工夫が伝わりました。
8.「RE:GUCCHI JP」
発表8チーム目は「RE:GUCCHI JP」です。
単位取得のラインとなる60点以上を目指し、学生3人がカンニング作戦に挑むという、タブーに切り込んだコミカルな作品です。テストのシーンでは構内ロケを行ったほか、チームの学生のゼミ担当教員の森口助教も出演し、テンポの良い編集で完成度の高い仕上がりになっていました。
大学生にとって身近な目標である60点をテーマにしたこの作品。高校生に「カンニングはダメ」というメッセージを伝えると同時に、大学の試験の様子も紹介したいという思いを込めたそうです。
9.「神山pro」
発表9チーム目は「神山pro」です。
SNSではなく、現実世界で仲間とつながる充実した学生生活を描きました。LINE VOOMを活用し、60人の仲間が登場するラストシーンでは「#じぶん更新中」で締めくくられ、大学生活の魅力と学生の成長が詰まった作品となりました。
動画作成では、実際のCMを見て研究し、本学の特徴であるワンキャンパスでの仲間との繋がりを伝えることを考えたそうです。出演した学生からは、演技中に関西弁が混じってしまうことに対して監督が厳しかったという裏話もあり、笑いが起こりました。
9チームそれぞれが「LINE」と「60」のキーワードを巧みに取り入れ、個性豊かな作品が完成しました。
高校生に向けて大学生活の魅力を伝えるという目的に対し、学生たちの創意工夫とチームワークが光る完成発表会となりました。
後編では、審査員による講評、特別ゲスト企画、そして感動の授賞式の様子を紹介します。