現代社会学部「プロジェクト演習」は地域社会との協働による課題解決型学習を行うゼミ科目です。
6つのゼミのうち、加藤敦典教授が指導するゼミでは、ベトナムでの現地調査をベースに地域課題の発見と解決プロジェクトの立案を目指し活動しています。
本年度の現地実習では、3年次生6人と2年次生4人(2年次生は「海外フィールドワーク入門」科目の履修生)からなるチームが、8月9日から計12日間の日程でベトナムに渡航し、首都のハノイ市と中部のハティン(Ha Tinh)省で実習を行いました。ハティン省は加藤教授が学生時代から調査をおこなってきた地域で、プロジェクト演習でも、毎年、調査に訪れています。
本年度の実習テーマは「一村一品 in Vietnam」でした。
ベトナムでは地域産業の振興をめざして2018年から全国で「一村一品」運動を展開しています。「一村一品」運動はベトナムではOCOP(One Commune One Product)運動と呼ばれています。ハティン省はベトナムのなかでも貧しい地域のひとつで、OCOPに早くから取り組んできた地域でもあります。現地調査では、OCOPの展開を学ぶともとに、自分たちでも地域の特産品をベースとした商品のアイデアを考えてみることを目標としました。

まず、ハノイ市では、ベトナム国家大学ハノイ校人文社会科学大学(以下、人文大)を訪問し、OCOPのコンサルティングと販売促進をおこなうOCOPセンター社のチャン・ティ・ゴック・トゥイ(Tran Thi Ngoc Thuy)社長から、ベトナムにおける一村一品運動の現状についてお話いただきました。

その後、ハティン省に移動し、ハティン省農業局「新しい農村」建設運動推進事務所の方々から、ハティン省における農村開発推進事業のなかでのOCOPの位置づけなどについてお話をうかがいました。
●推進事務所のウェブサイトにも本学の学生の訪問についての記事が掲載されました

また、ハティン省の南端にあるキーニン(Ky Ninh)地区に移動し、チエンタン(Chien Thang)水産加工協同組合を訪問し、地元の魚を使った特産のヌクマム(魚醤)づくりの様子を見学させていただきました。

その後、ハティン省マイフ(Mai Phu)村で現地調査と交流イベントを実施しました。
マイフ村は実習チームが、毎年、訪問している村です。科挙合格者を輩出してきた文化的伝統のある村で、特産品としては落花生、塩、線香などがあります。
ゼミ生たちは、ハティン省の特産物を使った商品の提案という目標のもと、「食べ物」班、「飲み物」班、「美容」班にわかれて、現地の日常的な食事のありかたや、熱中症対策として食べられているもの・飲まれているもの、美容のために食べているもの、ローカルな原料を使った髪や肌のケアの方法などについてインタビューやアンケートをおこないました。
「食べ物」班は、地元の方のご厚意で、一般のご家庭で地元料理の買い出し・調理を体験させていただくことができました。「飲み物」班は地元の子どもたちや小学校の先生のアドバイスをいただきながら、地元の塩田でとれた塩と市場で調達したフルーツをつかった水分補給ドリンクの試作にとりくみました。
また、「美容」班は、地元の人たちへのインタビューをもとに、ハティン省の特産品であるブオイ(buoi)という柑橘類が髪質キープのために使われていることや、昔はボーケット(bo ket)と呼ばれる黒い豆の抽出液が洗髪料として使われていたことなどを確認し、これらの原料を使ったヘア・オイルの開発が可能なのではないかという提案に至りました。

(プログラム参加証を授与)
調査には人文大の日本学科の学生3名が通訳兼調査パートナーとして協力してくれました。調査には同大学のグエン・フオン・トゥイ(Nguyen Phuong Thuy)先生も同行してくださいました。
マイフ村での最終日には、昨年に引き続き、小学校の先生方の協力を得て、子どもたちを対象とした文化・スポーツ交流イベントを実施しました。

イベントのひとつめは、子ども向けのサッカー教室です。こちらには、昨年と同様、地域の男の子たちがたくさん集まってくれました。休憩時間には「飲み物」班が試作したパイナップル・ソーダと塩ゼリーのミックス・ジュースを提供しました。
イベントのふたつめは、昨年、地域の女の子がイベントに参加できなかったという反省をふまえて、アクセサリーづくり教室をサッカー教室と同時進行で開催しました。こちらは、女の子の参加が多かったですが、一部、男の子も参加してくれました。




最後に、イベントに参加した小学生たちに日本の塩焼きそばを食べてもらいました。当日は雨が予想されたため、天候をみながらイベントの開始時間を調整するなど臨機応変な対応が必要になりました。用意していたアクセサリーの部品が足りなくなるなどの反省点もありましたが、無事にイベントを成功させることができました。
ハノイに戻ったあとは、人文大で成果報告会を開催し、その後、日本学科の1年生〜3年生のみなさんと交流会を実施しました。


●人文大のウェブサイトにも実習の様子についての記事が掲載されています
ベトナム各地で地域振興のための特産品づくりが進んでいることを目の当たりにすることができ、日本の学生として何が貢献できるかを考えるよいきっかけとなりました。加藤ゼミでは、来年度も、引き続きベトナムでの調査実習をおこなう予定です。