国際関係学部では、鈴井清巳教授による「トランプショック:社会や経済への影響」というテーマでワークショップが開催されました。SNSやニュースなどで日々の発言が大きく取り上げられるアメリカのトランプ大統領。その発言や政策が国内外に与える影響について、学生とともに多角的な視点から議論を深める貴重な時間となりました。
(学生ライター 文化学部3年次 向井 優)
はじめに鈴井教授は、現在のトランプ氏の行動について「戦後アメリカで構築されたリベラルな国際システムを、トランプ氏自らの手で攻撃・解体しようとしている」と述べ、「トランプショック」の背景を以下の3つの視点から分析しました。
- トランプ氏個人の大統領としての資質
- アメリカの国内政治事情
- 国際システムの構造的問題
特に注目すべき点として、鈴井教授は「現在起きている様々な問題は、リベラルな国際システムが構造的に大きく変化しつつあるという観点から捉えることが重要である」と話されました。
教授による解説がひと通り終了した後、討論者として2名の学生による質疑応答が行われました。討論者として最初に質問した学生は、「アメリカでの製造業の復活は、現実的に起こると思いますか?」という質問。鈴井教授は「現在のように海外に生産拠点を置き、グローバルなサプライチェーンを構築する方法は、そもそもアメリカが生み出したものである。そのシステム体制を再構築することは、製品価格の上昇につながり、結果として国民の生活を圧迫することになりかねない」と指摘しました。続いて、討論者2人目の学生が「トランプ氏の政策はWTO体制やFTAといった制度的枠組みに、長期的に見てどのような影響を与えるか?」と質問したのに対し、鈴井教授は「トランプ氏は商売(ビジネス)には長けているが、そのやり方をそのまま国際関係に持ち込むのは難しい。「ディール」によって短期的には利益を得ることができても、外交とは国際的な関係を少しずつ積み重ねて時間をかけてお互いの信頼を深めていくものであるから、これまで蓄積されてきたWTOルールに反した二国間の「ディール」の結果によって、次第に国民からの要請に応えられなくなり、国際的な信頼も益々失っていくだろう」と回答されました
私はこのワークショップを通じて、短時間にもかかわらず、トランプ氏の政治的動向やその影響についてより深く理解することができました。日々変化し続けている世界情勢の中で、私たち一人ひとりがその動きを注意深く観察する姿勢が求められていると感じました。今後もさまざまな国際情勢に対し、広い視野を持って考えられるようにしていきましょう。