経営学部「雇用関係論B」(担当:篠原 健一教授)は、雇用関係を切り口に企業組織を明らかにするという視点から、基礎的事項を中心に学修したうえで、日本の現状、国際比較、産業競争力など、より広いテーマに言及していく授業です。今回、授業の中で本学の卒業生であり、パナソニックグループ労働組合連合会の会長である福澤 邦治氏をゲストとしてお招きしました。講義は、2部構成で、第1部ではパナソニックグループの労働組合活動について、第2部ではパナソニックグループにおける働き方改革について解説していただきました。
(学生ライター 現代社会学部 3年次 町野 航汰)
第一部では、パナソニックグループ労働組合連合会の運動理念である「よい暮らし よい会社 よい社会を共に創る」に基づいた活動について説明されました。具体的には、ワークライフバランスを考慮した、健康で充実した暮らしの実現、多様な価値観の尊重、地域課題の解決に努めること、社会に誇れる会社を共につくっていくことなど、これらの指針に基づいた日々の活動をされているそうです。これは松下電器産業株式会社(現パナソニックホールディングス株式会社)の創業者松下 幸之助氏が、労使関係を単なる対立ではなく「対立しつつ調和する」を基本姿勢としていることや、労働者を「経営のパートナー」として尊重している点が現代にも引き継がれているとのことです。
第2部ではパナソニックグループにおける働き方改革に関した、社会の流れの先を行く労働環境の改善への取り組みについて話されました。また、近年の生成AIなど新たな技術が生まれてきたことにより、雇用の安定やスキルの再教育の必要性が生まれ、多様性の受容に伴う意見に折り合いをつけるなどの労働組合の現代の意義と課題に言及されました。さらに、働き方や価値観が変化する中、職場・現場のリアルを活動に反映するため、後進の育成のためにも若手の存在がより重要になると指摘しました。最後に福澤氏は、「労働組合は『過去の遺物』ではありません。企業と労働者が対話を通じて『よりよい社会』を築くためのブリッジビルダー(異なる人、グループ、または物事をまとめたり結び付けたりする人や物)です。また、どれだけ時代が変わっても人は働くもの。そして、働くことは1人ではできません。人との対話を繰り返すことで、互いの価値観を認め合い、物と心の価値観を豊かにしてほしいと思います」と語り、講義を締めくくりました。
今回、ライターとして講義を聞き、労働組合のイメージが刷新されました。労働組合と聞くと、今は主流ではないものという認識を持っていましたが、どの企業の労働組合も企業側と労働者を繋げ、労働組合も変化しながら、よりよい企業にしようと努力していることを知ることができました。