文化学部と生命科学部が合同で、大原の歴史文化、食と産業を学ぶフィールドワークを行いました!
文化学部京都文化学科 中野 宏幸 教授の「観光文化演習ⅠA(3年次)」と生命科学部産業生命科学科の三瓶 由紀 准教授の「産業生命科学特別研究2(4年次)」では、7月21日に合同で、赤紫蘇摘み体験を通じて食文化と農業への理解を深めるとともに、大原三千院で歴史文化を学ぶフィールドワークを行いました。四方を山に囲まれた盆地に位置する大原は、のどかな田園風景や山間に谷水を集めて流れる高野川など、自然の美しさと清らかさをたたえる山里です。学生は、大原の暮らしや風景にふれながら、地域で大切に守り続けている文化的価値と魅力継承の取組、持続可能な資源循環の仕組みについて理解を深めました。
赤紫蘇の畑にて
まず大原観光保勝会会長の辻 美正氏から「大原の特徴と赤紫蘇の歴史的価値」についてお話を伺いました。赤紫蘇を原料とする大原の「しば漬」は、大原の里人が寂光院に隠棲されていた建礼門院へ献上した際に「紫葉漬(しばづけ)」と命名されたことに由来しています。赤紫蘇は青紫蘇などの他の紫蘇科の植物との交雑が起こりやすいため、大原では雑種交配しないように毎年自家採種が行われ、良質の赤紫蘇を伝えていく努力が重ねられているとのことです。
辻会長のお話を熱心に聞く学生
その後、学生達は、畑に出て、赤紫蘇を収穫しました。刈り取った赤紫蘇は、「わいわい朝市」の会場に運び、腰を入れた水洗いの作業と葉をもぐ作業を学びました。慣れない手つきながらも、深みのある紫蘇の香りに親しみつつ、グループごとに協力しながら作業を進めました。紫蘇は余すところなく活用され、摘みおえた茎も堆肥として畑に還元されるとのことです。種まきから生育、刈り取りまでの年間のサイクルについて説明をいただき、自然の恵みを循環させていく農業の在り方についても学びを得ました。
刈り取った赤紫蘇の水洗いの指導をいただく学生
赤紫蘇の赤い色は、ブドウやブルーベリーなどに含まれるアントシアニンによるものです。赤紫蘇ジュースのレシピのレクチャーを受け、摘みたての赤紫蘇の葉を使用したジュースの作り方を学びました。短時間で煮出した液体にクエン酸を加えると、みるみるうちに鮮やかなルビー色に変化していき、学生たちはその美しい色合いに驚きの声を上げていました。昼食には、できたばかりの深い味わいの赤紫蘇ジュースとともに、京の伝統野菜である賀茂なすのしぎ焼きや瑞々しいトマトをいただき、季節の風味を堪能しました。
赤紫蘇の煮出しの説明を聞く様子
当日午後は、三千院を訪問しました。魚山とも呼ばれる大原は、仏教音楽(声明)の発祥の地であり、念仏聖が修行する隠棲の里であった時代から千有余年の歴史を紡いできています。三千院では門主の小堀 光實師より、「時を超えて息づく大原の歴史文化と佇まいをどう感じとるか」「さまざまな人々と接する中で自分なりの価値観をどう育くんでいくのか」のご講話とあわせ、学生との質疑応答の機会もいただきました。往生極楽院では、三千院の由来や仏像・建築について、説明をいただきました。
賀茂なすのしぎ焼き弁当と新鮮な大原の野菜をいただく学生
「わいわい朝市」の会場では、大原の生活や産業、大原に暮らす方々の思いについて、地元の方々と懇談を行いました。学生にとって赤紫蘇の葉を茎から取る作業は、特に自然との関わりについて深く考えるきっかけになったようです。学生からは「体験だから楽しめたけれど大変な作業で、普段何気なく飲んでいた赤紫蘇ジュースが、こんなに手間暇かけて作られていたことに驚いた」「自分達はもっと生産者の方々の丁寧な作業に思いをいたして、大切に頂かないといけないと思った」といった声が聞かれました。
自らの体験を通じて、命の存在やその尊さを実感し、問題意識を育みながら、これからの地域や産業のあり方を洞察してほしいと思います。