2025.07.29

社会協働型ワークショップ 2025年度第3回公開授業を開催しました

 現代社会学研究科専門教育科目「社会協働型ワークショップ」では「自然と文化」「身体と社会」「人と組織」をテーマに、社会との協働の架け橋となるための理論と実践を、ゲスト講師とのディスカッションを通して学んでいます。毎回のゲスト講師による講演は、全学の学生と教員に向けた公開授業となっています。


 第3回は、7月12日(土曜日)の3時間目に、京都少年鑑別所で精神科医の立場から少年の行動観察や資質鑑別に携わっている定本ゆきこ氏(精神科医)をゲスト講師として迎え、「少年非行は何を表しているのか —精神医学から社会を読み解く―」をテーマに開催しました。

講演の様子

 はじめに、少年による犯罪が近年減少傾向にあることに触れられました。その背景の一つとして、鑑別所に入所する少年の中には、軽度の知的障害や発達障害を有する者の割合が高いという現状がありますが、平成16年に発達障害者支援法が制定されたことにより、発達障害をもつ子どもたちに対する支援体制が徐々に整備されてきたことが、非行の減少に一定の影響を与えている可能性があると述べられました。

 ジェンダーの視点からは、少年非行における男女比が9:1であり、男性に多い傾向は時代や文化を問わず一貫して見られるとのことでした。さらに、思春期には親への「依存」と「反発」という葛藤(コンフリクト)が現れますが、男子は反発傾向が強く、女子は依存傾向が強いというジェンダー差があることが指摘されました。

 このような傾向から、女子非行の場合、母親への依存がかなわない中で異性への依存が強まり、そこから性的搾取を受けることが非行のきっかけとなるケースもあるとのことです。女子非行では、加害者性よりも被害者性の傾向があることも示されました。また、こうした背景を踏まえ、鑑別所などの施設で出産に至った場合、生まれた赤ん坊は母親の状況とは無関係であることを理由にすぐに母親と引き離されてしまう実態があることも指摘されました。その結果、母子関係を築くことができないこと、入所している母親のためにもならないことなど、大きな課題であることが強調されました。

 一方、性加害に関与した少年のケースでは、保護者が高学歴・高収入であることが多く、本人も高い知能を有している傾向があることが明らかにされました。こうした事例を踏まえ、日本においては包括的な性教育の導入が強く求められていると述べられました。

 講演後には、受講者から、少年犯罪と地域性の関係、また性加害と男性・性に関するステレオタイプとの関連など、さまざまな質問が寄せられました。犯罪や逸脱に関する理論を、具体的な事例と照らし合わせて理解を深める、非常に有意義な学びの場となりました。