京都産業大学法学部の教員と学生で構成する「京都産業大学法学会」主催の春季学術講演会が、6月11日に開催されました。
冒頭、高畠 淳子 学部長による挨拶があり、法学会講演会の趣旨などについて改めて説明がされました。
今回は生命倫理の観点から「優生保護法違憲判決について」と題し、憲法が専門の本学 法学部教授 中山 茂樹 教授が講演し、法学部の学生をはじめ大勢が聴講しました。
講演ではまず、優生学と優生政策についての説明がありました。
日本では日本国憲法下で本格的な優生政策が実施され、強制的な不妊手術が行われてきた歴史があります。
平成8年、改正前の優生保護法の規定(以下「本件規定」)に基づいて行われた強制不妊手術に関する国家賠償請求訴訟に対し、令和6年7月3日に最高裁判所大法廷判決が言い渡され、本件規定は特定の障害等を有する者が不良であり、そのような者の出生を防止する必要があるとする立法目的の下で「特定の個人に対して生殖能力の喪失という重大な犠牲を求める点において、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反するものといわざるを得ない」、特定の者を「不妊手術の対象者と定めてそれ以外の者と区別することは、合理的な根拠に基づかない差別的取扱いに当たるものといわざるを得ない」とし、本件規定は憲法13条及び14条1項に違反するものであったというべきであり、本件規定の内容は国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白であったというべきであるから、本件規定に係る国会議員の立法行為は、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けること、そして国の除斥期間の主張については「信義則に反し、権利の濫用として許されないというべきである」として斥(しりぞ)けたことなどを挙げ、「優生保護法違憲判決」の内容を詳細に解説されました。
中山 教授は、なぜどのようにこのようなことが起こったのか、反省の必要があること、優生思想・障害者差別は過去の問題ではなく現在・これからの問題であることを参加者に伝えました。
参加者は、中山 教授の丁寧で分かりやすい解説を熱心に聞き、講演終了後には中山 教授に質問する姿も見られました。
今回の講演会は、令和6年7月3日の最高裁「優生保護法違憲判決」が現実の問題とどう繋がるのか、一人一人がこの判決の意義を改めて考える契機となりました。