文化学部京都文化学科の「京都文化基礎演習A」(担当:吉野 秋二教授、受講生12人)で、宇治を散策するフィールドワークを行いました。目的は、世界文化遺産に登録されている宇治上神社・平等院鳳凰堂などの文化遺産を観察すること、大河ドラマ「光る君へ」でも注目を集めた紫式部や藤原道長のゆかりの地を実感すること、宇治の歴史の特性を深く理解することです。

事前授業での担当学生の発表

フィールドワークに先立ち、二回の事前学習を行いました。フィールドワーク先ごとの担当学生は、過去に受講した講義のレジュメ・書籍・ネット情報などによって、建築の様式など宇治の文化遺産などをこと細かに調べ、スライドやレジュメにまとめて発表しました。

宇治神社手水舎での担当学生の解説

フィールドワーク当日は、生憎の雨の中、まず京阪宇治駅から宇治神社に向かいました。宇治神社の祭神は学問の神様として知られる菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)で、平安時代の創建とされています。静かな森の中にたたずむ境内は落ち着いた雰囲気があり、学業成就や合格祈願に訪れる人が多いのが特徴です。境内には兎がモチーフの手水舎があり、狛犬ではなく「狛兎」が置かれています。
次は宇治上神社を訪れました。本殿は、正面一間の流造の内殿3棟を並立させ、それを流造の覆屋根で覆った特殊な形式で、左殿に兎道稚郎子、中殿に応神天皇、右殿に仁徳天皇を祀っています。現存する神社の本殿としては最古で、平安時代中期に建造されたものです。本殿西側の拝殿は鎌倉時代の建築で、寝殿造邸宅の要素を残しています。吉野教授と受講生で議論しながら、国宝建造物の特徴を具に観察しました。

宇治神社拝殿での担当学生の解説

宇治上神社を出た一行は、宇治川を東から西へわたり、叡尊建立の十三重石塔を経て、平等院に入りました。平等院は関白藤原頼通が父 道長から譲り受けた別荘を寺院としたもので、1053年に造営されました。本堂は当初「阿弥陀堂」と呼ばれていましたが、姿が翼を広げた鳳凰のように見え、屋根上に鳳凰像があることから江戸時代から「鳳凰堂」と呼ばれるようになり現在に至っています。堂内には定朝作「阿弥陀如来像」、五十二種の「雲中供養菩薩像」などがあり、鳳凰堂自体も含め国宝に指定されています。受講生は鳳凰堂や鳳翔館で建築や仏像、絵画などの特徴などを観察しました。
最後に、宇治橋と紫式部像を訪れました。宇治橋は日本三古橋の一つで646年に架橋されました。平安時代には奈良と京都を結ぶ交通路となる重要な橋で、『源氏物語』宇治十帖でも舞台装置として機能します。近隣には光源氏のモデルとされる源融の別荘もあったと考えられています。強風・強雨の中、増水した宇治川を眼下に見つつ宇治橋を渡海し、紫式部が描いた宇治の風土を実感しました。
事前学習・フィールドワークを通じて、宇治の文化遺産や歴史について理解を深めることができました。また、担当学生は、教室と現地両方でプレゼンテーション能力を磨くことができました。学期末には、成果を深掘りしレポートにまとめることになります。

平等院鳳凰堂での記念撮影