2025.06.16

複雑化する現代、人間として求められる死生観とは

文化学部必修科目「文化学概論」(担当:近藤 剛 教授)にてNCC(日本キリスト教協議会)宗教研究所研究員、真言宗御室派法園寺住職の松田 史氏をお招きし、「死生文化学 死生文化論について」と題して講義を行っていただきました。

初年次の概論であることに留意して、学問の方法論(記述的学問と規範的学問の違い)や文化の概念から丁寧に説明され、文化とは「人間が社会の中で形成し、伝承してきた価値観、信念、行動様式、技術、芸術、制度などの総体」と定義されました。そして「人間ないし自己の人生を豊かにする人文系に属する学際的な学問」として「死生文化学」を展開し、文化の問題として死を捉えていく視座を示されました。

現代社会において多くの日本人は若さと健康を至上の価値と捉え、アンチエイジングと称して高価なサプリメントなどの健康食品を買い求めますが、精神的・宗教的な修養には興味を持たず、特に死の問題について関心が希薄になっています。そこで、日本人の伝統的な祖霊観、死者供養の儀礼、看取りの文化としての臨終行儀を取り上げて、死に対する先人たちの豊かな想像力を明らかにし、死を見つめる心の在り方を鋭く問われました。

死生の文化を失った人間は、その存在意味までも失うことになるので、人の死を見送りながら自己の生と死、死後を思い描く「自己解放の死生観」が求められていると結論付けられました。特に、このような考え方を若い学生たちに知ってもらい、自分の発想を自由に豊かにしてほしいとエールが送られました。

このように文化学部では学識経験豊かな講師をゲストスピーカーとしてお招きし、多彩な学びを提供しています。

講義の様子
講義の様子
ゲスト講師の松田氏(向かって左)と近藤教授
ゲスト講師の松田氏(向かって左)と近藤教授