2025年6月4日(水)、「国際政治入門」(担当: 山本 和也 教授)の補完講義として、モハメド・オマル・アブディン博士による「政治に尾行され続ける人生: 開発途上国の人々はなぜ政治の話が好きなのか?」と題する特別講演会が開催されました。
今回招聘したアブディン博士はアフリカ政治経済の専門家であり、参天製薬に勤務される傍ら、東洋大学国際共生社会研究センター客員研究員も兼任されています。また、自らの経験を語った『わが盲想』(ポプラ社)の出版やテレビ出演を通じて、障害者支援の活動にも取り組まれています。
講演は、ご自身の半生についての前半部分とアフリカはじめとする現在の武力紛争に関する後半部分の2部構成で行われました。

前半では、スーダンの婚姻慣習から教育まで、幅広くスーダンの現状をお話しいただきながら、ご自身の体験も語っていただきました。また、来日することになった経緯、来日直後の苦労、さらに国際政治・比較政治の研究を志すことになる過程をお話しいただきました。
後半では、現在のスーダンの人道危機の深刻さはウクライナやパレスチナと同様、むしろそれ以上であるにもかかわらず、報道が前者の紛争に偏るという問題点を指摘されました。そして関心の強い地域だけでなく、危機の重大さに応じた報道の必要性を強調されました。また、現在の紛争形態がドローンなどによる新たなものに変わりつつあることに注目され、機械と人が対峙する戦闘状況から生まれる新たな非倫理性を説かれました。
講演後の質疑応答では、スーダンに関する内容から武力紛争一般に関するものまで、時間内に収まらないほどの多くの質問が出されました。時間内に十分に質問ができなかった学生の数名が、講演後に「延長セッション」を申し出た際には、博士は快く応じておられました。

普段、スーダンの事情に接する機会が少ない学生たちにとっては、たいへん興味深いお話であったようです。通常の講義以上に、集中力を持って聞き入っている学生たちの様子が印象的な講演会でした。