2025.05.29

『源氏物語』ゆかりの地、宇治を歩く

文化学部京都文化学科の専門教育科目「京都文化演習ⅠA」(担当:雲岡 梓准教授)で、『源氏物語』ゆかりの地、宇治を歩くというフィールドワークが行われました。このフィールドワークの目的は、『源氏物語』「宇治十帖」の舞台になった場所を実際に訪れて現在の様子を観察し、作品をより深く理解することです。
『源氏物語』は平安時代中期に紫式部によって書かれた長編物語。華やかな宮廷文化を背景に、絶世の美男子である光源氏の生涯とその恋が綴られています。その『源氏物語』に光源氏以外の主人公がいることをご存じでしょうか?『源氏物語』の第四十五帖から第五十四帖にかけて、光源氏亡きあと、その子孫たちの恋が宇治を舞台に展開する「宇治十帖」と呼ばれる巻々があります。
主人公は光源氏の息子、薫の君。実は晩年の光源氏の妻、女三の宮が他の男と密通して生まれた子です。出生の秘密を抱えた薫の君は、宗教的な救いを求めてやって来た宇治の地で、大君・中の君・浮舟という美しい姉妹たちと出会い、はかなく悲しい恋をします。

宇治市源氏物語ミュージアム前に集合する学生

宇治市源氏物語ミュージアムにて、学生は実物大に再現した牛車や平安時代の貴族の生活の様子を再現した展示などを見学し、源氏香の体験などを行いました。また、映像展示によって『源氏物語』の成立事情、「宇治十帖」のあらすじなどを学習しました。

その後、『源氏物語』作中で大君・中の君・浮舟の邸宅がある場所と設定されている宇治上神社・宇治神社周辺を訪れ、現在の雰囲気や宇治川との距離などを調査しました。 続いて宇治川にかかる朝霧橋の北側に位置する匂宮と浮舟の像を見学しました。浮舟は薫の君の恋人でありながら、薫の君の友人で親族でもある匂宮に言い寄られ、三角関係に発展していまいます。穏やかで思慮深い薫の君と、情熱的で奔放な匂宮という正反対の貴公子たちの板挟みになり、浮舟は悩み苦しみます。そんなある日、匂宮は浮舟を宇治川に連れ出し、小舟に乗って川を渡りながら永遠に変わらない愛を誓うのでした。

展示物を見学する学生

朝霧橋たもとの匂宮と浮舟の像

このように「宇治十帖」ゆかりの場所を調査しながら宇治川を渡り、平等院に参詣してフィールドワークを終えました。参加学生たちは、「実際に宇治を訪れたことで、宇治の姫君たちの邸宅の様子がイメージできるようになった」、「『源氏物語』への理解が深まった」などの感想を述べていました。