卒業生インタビュー(高橋 徹也さん)
学生広報スタッフが、社会の最前線で活躍されている卒業生にインタビューするこの企画。今回は2025年6月に上新電機株式会社 代表取締役 兼 社長執行役員 CEOに就任された高橋徹也さん(1986年 法学部卒)にお話を伺いました。学生時代の経験がどのように現在の業務に生かされているのか、そしてこれからの時代をどのように捉えていくべきなのか、高橋社長から悩める学生に向けたメッセージをご紹介します。
取材:学生広報スタッフ 小谷 姫愛さん(文化学部・2年次)
学生時代の思い出を教えてください。
私は兵庫県の出身ですが、陸上競技部の伊藤輝雄監督(当時)からお声がけいただいたことが、入学のきっかけになりました。学生寮で生活をしていたため、そこでは上下関係や礼儀、競技も学業も誠実であることの大切さを学ぶことができました。「お客様のためにどうあるべきかを第一に考えて、誠実な仕事をする」というモットーの原点は、京都産業大学での学びにあると言っても過言ではありません。京都産業大学は何でも話せる友達がすぐにできる、情報交換が活発な学内環境で、いろいろと勉強になりました。例えば、他の体育会クラブのメンバーやクラブ活動をしていない学生とのコミュニケーションを通して、自分の知らない世界を知ることができ、見識が広がったと感じています。また、京都での生活を通じて、長い歴史を積み重ねてきた土地ならではの魅力や、数々の超一流企業が誕生してきた旺盛なチャレンジ精神など、独特の文化を肌で感じることができました。
上新電機への入社を決めた理由や、学生時代の経験が業務に生かされたエピソードを教えてください。
学生時代に中華料理店で出前のアルバイトをしていたときの経験から、接客に興味を持ちました。バイクに乗って商品を運び、お客様と接する時間が楽しかったんです。そうして小売業に何社か応募した際に、ご縁があったのが上新電機でした。私は法学部でしたが、入社してからは「経営学部にしておいたらよかったな」と(笑)。ですが、業務に関連する課題やお客様からのご意見、法令への対応においては法学部での学びが役に立ったこともありますし、弁護士の方と話す際にも、より深い議論をすることができます。京都産業大学での学びや経験は、何一つとして無駄なものはなかったと感じています。
───(小谷さん)学芸員になるという目標に向かって勉強している私にとって、高橋さんの学びや経験に無駄なものはないというお言葉はとても心強く感じられました。私の所属する文化学部では「デジタルアーカイブ」に関する授業があり、デジタルでの資料の保存方法について学んでいます。資料の保存・管理、活用、未来への継承を担う学芸員の業務において、大学で学んだ知識が生かせるのではないかと感じています。
社会人の視点から、学生時代にやっておけばよかったと思うこと、また、学生に今やってほしいことは何ですか。
やっぱり、臆さず見聞を広げてほしい。その点で言えば、海外に行くという経験は自分の視野が大きく変わってくると思っています。
───(小谷さん)私はアルバイトで外国人観光客の方を接客する機会が多く、言葉の壁にぶつかることも少なくありません。しかし少しずつでもコミュニケーションをとり、お客様に満足いただけた時には大きな自信につながったことを覚えています。
その他にも、いろいろな人と会って話をすること。 自分のアルバイト先の社員の方や店長に、仕事をしていく上での苦労なんかを聞いてみるのも一つですよ。自分より目上の人や尊敬する人と話す機会があると遠慮してしまうと思いますが、それでも積極的に話していく。うまくいけば自信を持てば良いし、自分の力では通用しないなと感じたとしても、その自覚が大切なんです。
──(小谷さん)ソクラテスの言う「無知の知」に近い考えですね。自分が今、何を知らないのか認識すること。そして、自分の知らないことを積極的に知っていく姿勢が重要だと。
私もまだまだ勉強不足ですし、それぞれの道を極めた方とどんどん話をしたいと思っています。先輩からの情報というのも役に立ちますし、同僚や友人、人との縁は絶対に大切です。
新CEOとして、社会の大きな流れや変化を踏まえ、どのような取り組みを行っていきますか。
現在、私たちは変化が激しく、不確実性の高い時代に直面しています。従来の成功モデルが通用しにくくなっている中で、企業には柔軟で新しい経営のあり方が求められています。
これまでのようなトップダウン型のマネジメントでは限界が見え始めており、これからは従業員一人ひとりの個性や意見を尊重することが重要です。その結果、働きやすさや働き甲斐がうまれ、そこからうまれる意欲が新しいアイデアやイノベーションをうみだします。こうした取り組みによって、従業員が自ら考え、行動する「自立航行型」の組織が形成されると考えています。
上新電機は、社会が抱える重要な課題である高齢化や環境問題に真摯に向き合い、創業以来の強みである家電とネットワークの力を生かして、地域社会やお客様の課題解決に貢献してまいります。そして、全てのステークホルダーから信頼され、高い評価をいただける企業を目指して、これからも努力を続けていきます。
将来のキャリアを不安に思う学生たちへ、メッセージをお願いします。
大半の学生が「自分はどうしたらいいのだろう」と悩んでいると思いますが、それが普通です。学校でもアルバイトでも、身の回りのことから学びを吸収して、自分の栄養にしていく。学生のうちにどれだけ多くの見聞を広められるかで、「自分が進むべき道」への解像度がどんどんと上がっていきます。学生の頃は、まさか自分がこのような立場で仕事をしているとは夢にも思っていませんでした。CEOになって、「あの時もっと勉強しておけばよかった」と振り返ることもあります。今皆さんがやっておられることは、今しかできないとても尊いことです。皆さんも今この時を大切に、未来の自分を信じて、夢の実現へと邁進してください。
編集後記
インタビューの中で、高橋社長は私個人の意見にも真摯に耳を傾けてくださいました。そのような高橋社長のお姿からも、異なるさまざまな分野の方と会話し、そこで得られた人とのつながりから自分の視野を広げていく重要性を学ぶことができました。不安定な社会の流れや不透明な将来に対し不安もありますが、今回のお話を参考にして、自分から新しいことにチャレンジし、世界へ積極的に踏み出していきたいと思います。