研究テーマ
刑法解釈学(違法性論)
高校生に向けた研究内容の紹介
新聞やテレビで犯罪のニュースを耳にしない日はありません。また、裁判員になった場合、犯罪の成否を検討しなければなりません。どのような行為が犯罪となり、それに対してどのような刑罰が科されるかを定めている法律を刑法といいます。犯罪が成立するには、構成要件該当性、違法性、責任という3つの要素を満たさなければなりませんが、そこには様々な解釈学上の問題が存在します。私の専門はこの刑法の解釈学であり、その中でも正当防衛をはじめとした違法性論について研究をしています。刑法ゼミの熱いバトル
「知人のバッグを持ち帰った」 窃盗罪が成立する条件を考察-議論を積み重ね、ロジカルな思考力を身に付ける
刑事法の中でも、特に刑法解釈学を学ぶゼミです。「人を死亡させた」「人の物を盗んだ」という行為も、状況やそれに対する評価の仕方で罪名は大きく変わります。授業では毎回1つのケースについて、ど のような罪名が成立するのかをグループで調べて発表します。
例えば、Aさんが自動販売機で飲み物を買っている隙に、自動販売機近くのテーブルに置かれたAさんのバッグを持ち帰れば窃盗罪ですが、Aさんがバッグを置いたまま別のフロアに行き、10分後に現れたBさんがテーブルの上のバッグを持ち帰ったケースならどうでしょうか。バッグの形態や置かれた状況はどうだったか。後で警察に届ける気持ちがあったか。
故意と過失の境界線も見定めなければなりません。刑法解釈学はロジックの積み重ねが最も色濃く出る学問の一つ。学生は議論を通して論理的な思考力と多面的な見方を実践の中で学びます。
刑法ゼミの熱いバトル
「刑法討論会」
刑法討論会は法学部の刑法をテーマとする四つのゼミ対抗で行われるイベントです。事前に出題される架空の事件について、その行為がどのような罪にあたるのか、その根拠は何かを各ゼミの代表者がプレゼンし、教員の審査と聴講者の投票によって優勝が決まります。
例えば、「Aが殺し屋に殺人を依頼したが、殺し屋が誤って別人を殺害してしまう。依頼者であるAと殺し屋はどんな罪に問われるか?」といった難問が出題され、会場では鋭い質問が飛び交う白熱のバトルが展開。教員のアドバイスなしに学生だけで準備を進めるため、苦労もありますが達成感もひとしおです。
ゼミナール/研究室のテーマ
刑法演習
ニュースや事例問題、判例などを素材として、ディベートおよび報告をしてもらいます。それらを通して刑法理論を学び、ひいては刑事法の学問的面白さを知ってもらうことを目標としています。
ゼミ/卒業研究の紹介
私のゼミは、事例問題研究、模擬裁判、政策立案など、様々な角度から刑法理論や刑事法を学び、その学問的面白さを知ってもらうことを目標としています。そして、ゼミは、ゼミ生が主体的、能動的に学ぶ場であり、学問的発展だけでなく、人間関係構築という観点からも重要なものといえます。そこで、ゼミ一丸となって刑法討論会などの行事に積極的に参加し、ゼミ生皆の進路選択に役立つ、充実した演習にしたいと常に考えています。
プロフィール
京都生まれの京都育ちです。もっとも、幼少期をアメリカで過ごし、一応、帰国子女です。英米刑法を研究している関係から、大学院時代から頻繁にカナダやアメリカへ行っていますが、知人からは、海外での私は表情豊かで明るさが倍増すると言われます。OBの田中選手の活躍もあり、ファンが増えてきたラグビーですが、私は、中学時代からラグビーを観るのが好きです。それぞれの専門性を活かしつつ、皆で一歩一歩前進していく様や時折訪れる独走など、観ていて飽きません。
高校生へのメッセージ
皆さんが手放せないスマートフォンには様々な情報が届きます。その溢れるような情報の中から必要な情報を選ぶ力、そしてそれらを基に論理的に考える力が、AIの到来により今後ますます重要になっていくことでしょう。わが法学部では、論理的な思考力を育てることに重きをおいています。また、法学部は法律を暗記する学部だと勘違いされることが多いですが、そうではありません。各学生が関心を持った法分野について、講義そして演習を通して、学びが深まる楽しさを感じてほしいと思っています。