すぐそこの未来「Society5.0」~新しいサイバー社会が到来する!~

21世紀になってコンピュータや通信技術がめざましく発展しました。いまではインターネットを利用したパソコンやスマートフォン、タブレットなどを使わない生活は考えられません。みなさんIoTとかAIとかいう言葉をきいたことがあると思います。IoT(Internet of Things)というのは、そのまま訳せば「モノのインターネット」ということです。

「モノのインターネット」? なにそれ??。IoTというのは、あらゆるモノがインターネットにつながり、データを送受信して情報を受け取ったり、遠隔地から機器を操作したり、いろいろなサービスを受けたりすることができることをいいます。

自動車や家電機器、生産設備といった「モノ」が、直接インターネットにつながって、その情報にインターネット経由でアクセスできることです。

例えば、外にいてもスマートウォッチでインターネットからの情報を受け取ったり、スマートスピーカーなど自宅にあるIoT家電で家族の帰宅やペットの様子を確認したり、自宅にあるテレビなどの家電を操作したりできるのです。

このようなIoTをうまく使うことで、インターネット上では、ビッグデータといわれる膨大な量のデータが流れ、集められることになります。また、IoTがさまざまな分野で使われるようになり、ビッグデータを活用すれば、これまでにはない私たちの社会生活における利便性が向上することとなるでしょう。

また、AI(Artificial Intelligence)は、人工知能と訳されます。ニュースなどでは、囲碁、将棋やチェスでAIを使ったソフトとプレイヤーが対戦して勝ったとか負けたとか、AIを使った車の自動運転の実験が成功したとかしなかったとか話題になっています。

AIには、人間の知能そのものをもつ機械を作ろうとする研究と、人間が知能を使ってするさまざまなことを機械にさせようとする研究とがあります。いずれにしても高性能なコンピュータを使って、ディープラーニングと呼ばれる技術を用いたデータ処理によってAIでできることの幅が拡がっていきます。政府も「AI戦略」を掲げて次世代に向けた取り組みを始めています。

これまでの社会は、人がさまざまな情報を入手して、これを分析して使うという社会でしたが、これからの社会では、フィジカル空間という現実社会からセンサーとIoTを通じてあらゆる情報(ビッグデータ)がAIにより解析されていっそうの価値を高めて社会にフィードバックするということが構想されているのです。このような社会が「Society5.0」と呼ばれています。

これまでの歴史のなかで、社会は、狩猟社会(Society1.0)、農耕社会(Society2.0)、工業社会(Society3.0)、情報社会(Society4.0)と大きく変貌を遂げてきました。そして、いま、新たな社会「Society5.0」が生まれようとしているのです。

しかし、このような新しい社会「Society5.0」の実現を目指すにあたって、インターネットや情報システムの安全性と信頼性の確保が重要な課題となります。

インターネットに代表される情報システムの利用では、情報の不正な外部漏えいや情報の不正改ざん、外部からの侵入によるシステム障害による利用不能が生じないようにしておかなければなりません。そのためには、私たちひとりひとりが、サイバー空間の安全性を脅かすような脅威について関心を抱くことが必要です。

日本では、2014年に「サイバーセキュリティ基本法」(平成26年法律第104号)が制定され、インターネットを悪用したり、インターネットに対して攻撃をするなどしてコンピュータに対する不正な出来事から利用者を保護するために国としてどんなことが必要で、どのようなことをしていくかという基本的なことがらが定められました。その他にも、コンピュータ・ウイルスの製造や保有などを処罰する刑法や、不正アクセスを禁止して違反者を処罰する「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」をはじめとして、迷惑メール対策の「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」、リベンジポルノ被害防止のための「私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律」など、難しい名称がつけられた法律がたくさん定められています。

安全・安心な新しい情報社会を築いていくために、新しい社会に必要なルールを定めた「法」というものがどういうものかを学んでいくことが求められているのです。

安冨 潔 教授

刑事法・情報法


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