日本の原発政策大転換 2023.01.30
2022年のクリスマス前、日本政府が原子力発電(原発)の長期運転を認めることや、次世代型の原発への建て替えを具体化する内容を盛り込んだ今後の基本方針を発表しました。
エネルギー安全保障
今回のニュースを紐解く上でキーワードになるのが、「エネルギー安全保障」です。言うまでもなく、エネルギー供給は経済活動や市民生活の根幹に関わってくるものです。特に日本は「持たざる国」と呼ばれるように、エネルギー源に乏しく、石炭や石油など、海外からの輸入に頼ってきました。経済産業省によると、2021年の日本のエネルギー自給率は11%となっており、106%の米国と比較するといかに低い水準であるかが分かると思います。ですので、社会経済活動に必要なエネルギーを、妥当な価格で安定的に確保・供給することは日本のエネルギー安全保障の観点から喫緊の課題として取り組まれてきたのです。
ロシアのウクライナ侵略とエネルギー需給の変化
2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵略が、世界規模でのエネルギー危機を引き起こしたことは周知の事実です。経済産業省によると、2021年の時点で日本は石油の輸入量の4%、天然ガスの9%、石炭の11%をロシアに依存していました。これは、欧州諸国、例えばドイツが2020年に石油34%、天然ガス43%、石炭48%をロシアに依存していた事と比較すると低い数値ですが、日本のエネルギー自給率の低さを考慮すると、この影響は決して小さくないと言えるでしょう。また、ロシア産エネルギー依存度の高かった欧州諸国がロシア以外の国から石油・天然ガス・石炭を調達しようとする動きは、資源をめぐる国際的な争奪競争を加速させるであろうということも想像できたわけです。
このような中、日本国内では去年6月が異例の暑さであったこともあって、電力需要が大幅に増大し、電力需給がひっ迫しました。この2ヶ月後に、日本政府は原発の再稼働の追加及び、原発の新規建設も検討することを明らかにしたのです。
原発の新増設をめぐる課題
今回のニュース解説では、今回の方向転換についての評価を加えることは控えておきたいと思います。むしろ、この記事を読んで、読者自身が今後の日本が歩むべきエネルギー政策について考えるきっかけにしてもらいたいと思っています。そのための材料となる記事をいくつか提示して、今回のニュース解説を締めくくりたいと思います。
- エネルギー資源の動向を把握しよう
- 原子力発電は経済合理性にも欠き、安価で安定したエネルギー源にはなりえないという主張
- 再生可能エネルギー(自然エネルギー)こそがエネルギー安全保障を高めるという主張
- エネルギー安全保障問題を再生可能エネルギーで解決するのは困難であるという主張
参考文献
Masahiko Iguchi and Maki Koga, "The State of Environment and Energy Governance in Japan" in S. Mukherjee & D. Chakraborty (eds.,) Environmental Challenges and Governance: Diverse perspectives from Asia. Routledge, 2015.