フランス語からの外来語 2023.04.10

日本語の外来語で、英語からの外来語の次に多いのはフランス語からの外来語であると思われます。特に料理、服飾、芸術などの分野に多いのですが、それだけにとどまらず多くの分野にわたっています。この記事ではフランス語からの外来語を幾つか取り上げて少し突っ込んだ解説をしてみようと思います。


小学校で習うフランス語

小学校でも習う長さの単位「メートル」もフランス語mètreの借用語です。これは世界共通の長さの単位としてフランスで定められたものです。その理念の通り、現在では世界中で用いられています。科学の進歩と共にその定義は変化しましたが、正式の定義は現在でもフランス語で書かれています。また、面積の単位「アール」や体積の単位「リットル」もフランス語のareおよびlitreの借用語です。フランスは、科学やその他の分野において大きな貢献をしています。そのため、フランス語からの外来語も多くの分野にわたっています。

フランス語   日本語
mètre メートル
are アール
litre リットル

フランス語由来の単位

日本で独自の意味変化

「メートル」などの単位は世界共通であることを意図したものですので、基本的には意味は変わらないと言えます。しかし、外来語は元の言葉とは意味が変わることがよくあります。「グルメ」もフランス語gourmetからの外来語です。もともとの意味は「食通の人・美食家」で、日本語にもその意味で借用されています。しかし、日本語では、「ご当地グルメ」や「B級グルメ」のようにも使われています。この表現では、「グルメ」は「美味しい料理」の意味で用いられています。これは日本語で追加された意味だと思われます。このように、フランス語からの外来語だからといって、もともとのフランス語と同じ意味とは限らないので注意が必要です。

フランス語   日本語
gourmet
(食通の人・美食家)
グルメ
(食通の人・美食家)
   
    (美味しい料理)

日本語で意味が変化

フランスからの直輸入ではなかった

フランス語からの外来語というと、フランスから直接入ってきた言葉と思われるかもしれません。しかし、実は、英語を経由して入ってきた言葉が多いです。コンサートの終わりに、もう一度演奏しほしいと観客が「アンコール」という声をかけることがあります。これは、フランス語のencoreが語源です。しかし、フランス語のencoreは「また」という意味で、「アンコール」という意味はありません。また、かつてこのような使い方がされた形跡もありません。フランス語では、アンコールはbisと言います。これは、「2回」を意味するラテン語です。それでは、日本語での「アンコール」という言葉の用法はどこから出てきたのでしょうか。実は、英語においても、アンコールをフランス語のencoreを用いて言うのです。これは英語で始まった用法だと思われます。日本語にはこれが借用されたと考えられます。

フランス語   英語   日本語
encore encore アンコール
(また)   (アンコール)   (アンコール)

英語を経由してフランス語を借用

フランス語と英語と日本語

英語は何世紀にもわたってフランス語の影響を強く受け、多くの言葉を借用しています。古くからの借用語は、普通の英単語になっていて、フランス語だとは思われていません。例えば、flower(花)やcolor(色)も、もともとはフランス語からの借用語なのです(ただし、現代のフランス語では、それぞれfleurとcouleurと言います)。比較的新しい借用語は、綴りも発音もフランス語らしさを持っていて、フランス語だと意識されています。これが日本語に借用される際には、フランス語だと紹介されます。ですから、フランス語由来の言葉ということになります。しかし、その意味や用法は英語でのものであることがあります。その場合、フランス語の元の言葉とは意味や用法が異なるということが起きるのです。これは、英語圏でのフランス語の影響力の強さと日本における英語の影響力の強さが相まって生じたことです。


平塚 徹 教授
外国語学部 ヨーロッパ言語学科 フランス語専攻

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