ロシア・ウクライナ戦争の影響による軍縮条約の後退現象―新たな戦前?・戦間期?
報告者 | 岩本 誠吾(世界問題研究所長・法学部 教授) |
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開催場所 | 京都産業大学 5号館5401教室+オンライン(Teams) |
開催日時 | 2025年6月25日(水)15:00~17:00 |
研究会概要
世界問題研究所では、2025年6月25日(水)に本年度第3回の定例研究会を実施した。岩本 誠吾 所長(法学部 教授)が「ロシア・ウクライナ戦争の影響による軍縮条約の後退現象――新たな戦前?・戦間期?」と題して講演を行った。
はじめに、2014年のロシアによるクリミア半島への侵攻以降、欧州諸国ではロシアの軍事的な脅威に対して、徴兵制復活や軍事費増額などの軍備増強の流れが強まっている現状について説明された。また、欧州におけるドイツの軍事的な存在感が大きくなっていることも指摘された。
こうした中で、対人地雷禁止条約から脱退する国が現れ、ウクライナによる条約違反事案の疑いがあるなど、対人地雷に対する法規制が衰退している。同様の問題は、クラスター弾条約についても言える。軍縮条約の後退現象は、安全保障環境が悪化する中での国家の主権行使の結果でもあり、その背景には軍事大国が軍縮条約に未加盟だという現状がある。大国が参加しない軍縮体制は、「善人の手を縛るもの」であり、非加盟国が戦闘手段において優位になるという構造的な問題がある。通常兵器に関する軍縮条約が慣習法となっていない中では、軍事的必要性と人道的配慮との比較検討から各国が現実的に選択していく状況が続くのではないかとされた。
講演後の質疑応答では、イランの核開発をめぐる軍事衝突や、軍縮にまつわる慣習法の範囲、対人地雷の戦術的意義が復活した背景となっているウクライナ戦争の状況など、多様な観点からの質問が提起され、活発な議論が展開された。現下の国際情勢と軍縮をめぐる国際法的な課題について、認識を深める有意義な機会となった。

