第4回 児童福祉法制研究会開催

2023(令和5)年2月14日(火)、社会安全・警察学研究所で、第4回児童福祉法制研究会が開催されました。

この研究会は、児童虐待対策を中心に児童福祉法制の全体について、法学の多様な分野から多角的に検討するとともに、児童福祉や警察の現場との対話を目指すものです。コロナ禍で延期していましたが、オンラインも併用することにして、3年ぶりの開催となりました。民法・行政法・憲法・刑事法などの研究者が19名(韓国からの3名を含む)、児童相談所の関係者が12名のあわせて31名が参加しました。

今回の研究会では、昨年行われた児童福祉法と民法の重要な改正を取り上げました。まず、山口亮子氏(関西学院大学法学部教授・民法)が「2022年の児童福祉法改正と民法改正」と題した報告を行い、児童相談所による一時保護に司法審査が導入された児童福祉法改正を主に取り上げて、改正の内容や、今後実務に与える影響などについて論じました。引き続いて大石眞氏(京都大学名誉教授)から、「民法改正論議における懲戒権問題——法制審議会・親子法制部会の審議を中心に——」と題して、法制審議会委員として改正案審議に参加した経験を語っていただきました。

報告を受けて活溌な議論が行われました。一時保護の司法審査については、(1)その法的性格は「司法審査」と呼べるほどの適正手続が保障されてはおらず、刑事事件捜査での逮捕状や国税犯則手続での許可状に類似したものに止まるのではないか、との指摘や、(2)一時保護開始から1週間以内に一時保護上を請求するのに必要な資料を集めるのは実務上大きな負担になる、との実務家からの問題提起があり、(3)現在厚生労働省で進められている「一時保護時の司法審査に関する実務者作業チーム」における議論を注視する必要がある、との情報提供もなされました。民法の懲戒権の廃止については、(1)法制審議会における関係実務家や当事者からのヒアリングの意義、(2)中間試案以降に改正案の文言が大きく修正された経緯、などについて質疑がなされ、(3)懲戒権が削除されたことによって、児童虐待行為が民法の不法行為になる範囲や刑法上の犯罪になる範囲について影響があるかどうかは未知数であることが確認された一方、(4)児童相談所での親への指導がずいぶんやりやすくなる、との指摘もありました。

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