経済学部の専門教育科目「日本経済史A」(担当:井奥 成彦非常勤講師)は、日本経済の栄枯盛衰を、歴史的視点から多角的に腑分けして、今後の日本経済の在り様を学ぶ講義です。現代の日本経済が抱える課題や特徴を理解するためには、その成り立ちや変遷を知ることが不可欠です。今回の授業では、上方講談師・玉田玉秀斎氏をお招きし、江戸時代の経済を題材にした講談を通じて、歴史と経済のつながりを体感的に学ぶ機会が提供されました。
(学生ライター 現代社会学部3年次 町野 航汰)
上方講談師・玉田玉秀斎氏紹介
幕末、京都を拠点に活躍した神道講釈師・玉田永教の流れを汲む玉田家の四代目。ロータリー交換留学生としてスウェーデンに留学中に日本文化への関心を深め、2001年に、四代目・旭堂南陵へ入門。2016年に四代目・玉秀斎を襲名されました
講談とは張り扇や拍子木でリズムを取りながら語る日本の伝統的な話芸です。落語や漫談、雑談と混同されがちですが、講談はよりドラマ性が強く、史実とフィクションを織り交ぜながら聴衆を引き込む語りが特徴です。江戸時代に「講談師、見てきたような嘘を言い」という川柳が詠まれるほど、実際の言い伝えとフィクションを織り交ぜた臨場感あふれる語りが親しまれていました。登壇された玉田氏は「講談師の語りは聞き手を知的好奇心の扉の前まで運ぶことにあります。授業が終わった後に、どの話が史実で、どこがフィクションなのかを調べてみてほしい」と前置きし、講談が始まりました。
三井高利(みつい たかとし)の商才と挑戦
今回の演目は、現在の三越や三井住友銀行など三井グループの礎を築いた「三井高利」です。三井高利は江戸時代の商業の発展に大きく貢献した商人です。三井高利は現在の三重県松阪市に生まれた三井家の四男。18歳で江戸店の経営を任され、20歳でのれん分け(独立)を申し出るも、長男に拒まれ、思い通りの商売ができるようになり江戸・日本橋に「三井越後屋呉服店」(現在の三越の前身)を開業したのは52歳になってからでした。高利は、母から「商いというのは、仏様の変わり身」と教えられ、商売を通じて人々に喜びを届けることを信条とします。その理念のもと、彼は顧客のニーズに応える柔軟な商法を展開し、三井家の繁栄の礎を築いていきます。講談では、彼の人物像や商業戦略、宣伝方法などがユーモアを交えて語られ、学生たちは巧みな話術に引き込まれ、メモを取る姿も見られました。玉田氏の歴史的事実と創作が絶妙に織り交ぜられた語りは、単なる知識の伝達を超え、学びの楽しさを実感させるものでした。
講談を聞き「三井高利」という人物や、その人物像のほか宣伝方法などへの理解が深まったと感じました。私自身、「講談」というものを初めて聞きましたが、とても面白く、ただ、同じような歴史の説明を聞くにしても、物語調で進められると続きが気になり、話に聞き入ってしまいました。経済学部では、こうした独創的なアプローチを取り入れた授業が展開されています。迫力のある講談に興味を持った方は、ぜひ履修してみてはいかがでしょうか。