学部の授業以外にも活躍の場を求めて積極的に取り組む学生を紹介する本企画。
今回は、英国のリーズ大学への派遣留学を終えた、国際関係学部4年次 石原沙弥さんに話を聞きました。
1.なぜ留学先にリーズ大学を選びましたか?
私がリーズ大学を選んだ理由は主に大きく二つあります。もちろんいうまでもなく英語を習得したいという思いはあったのでそれは省きます。第一の理由は、「ディアスポラ」や「移民コミュニティ」の実態を現地で学び、研究できる環境に魅力を感じたからです。リーズはイギリスでも有数の多文化都市であり、特に南アジア系(パキスタン、バングラデシュ、インド)やカリブ系、アフリカ系などの移民・難民コミュニティが集中しています。実際に、イングランドの中でも人口の約18.9%が非白人系民族であることなど、移民人口が多い都市のひとつであることを事前に調べ、この都市に決めました。特に私の寮から徒歩1時間半ほどの場所にあるHarehillsやChapeltownなどの地域には、長年にわたって形成された移民コミュニティがあり、イスラム系ディアスポラの暮らし・文化・葛藤を調査するに最適なフィールドだと考えました。もう一つの理由は、「衣服のリサイクル文化」に関する現地調査を行いたかったからです。大学一年から京都市の衣服循環プロジェクトに関わってきた私は西洋で見られる地域のコミュニティショップ(チャリティーショップ)に強い関心を持っていました。英国はEU離脱前からリユース、リサイクル政策の先進国であり、特に衣料品に関しては、慈善団体や地域のコミュニティショップ(チャリティーショップ)が全国的に展開されています。私が日本でお世話になっていた古着屋や京都市循環フェスの関係者の方々から知り合いを紹介していただき、彼らのコミュニティでどのように市民参加型の循環システムが行われているのかを調査したいと考えました。



2.留学期間のスケジュールを教えてください
2024年9月23日 | リーズ市到着 |
9月28日 | 1セメスター開始 (2週間ごとにテスト) |
12月10日〜2025年1月10日 | クリスマス休暇 |
1月11日 | 2セメスター開始 |
5月25日 | 2セメスター終了 |
6月30日 | 帰国 |



3.留学先で履修した授業科目や授業の様子を教えてください
general englishコースという名前の通り全てが語学学習が軸になっており、テストの時期に合わせ2週間ごとにトピックが変わるといった形でした。具体的な例としては英国におけるvegan人口の広がりについて実際にリーズ大学のソサエティの方々とディスカッションをする中で知識をつけたり、法と倫理の授業では「囚人のジレンマ」などを用いて日本とは違う法律・規制について学び、メディア報道の週ではスポーツジャーナリストの方の講演会、個別ディスカッションを終えた上でリサーチテーマを絞りレポート形式でまとめる、などに取り組みました。



4.留学期間で心に残っているエピソードを教えてください
一つ一つ挙げるときりがありませんが、毎日の学生生活の中で同じ大学の多国籍な友達と開催する「ポットラックパーティー」は本当に楽しかったです。それぞれ持ち寄る食べ物にはナイジェリアの子のジョロフライスや中国のビャンビャン麺などそれぞれの国の背景が見える初めての食べ物ばかりで大学寮にいながら世界中を旅をしている気分になりました。私も味噌汁など、イギリスで再現できるもので日本食を振る舞いました。美味しいね、と話しながら食事を通してお互いの国の文化や育った環境について知る時間は彼らとグッと距離が縮まる素敵な時間でした。



5.留学前に立てた目標は、留学中に達成できましたか
「世界中に友達を作る」「咄嗟に伝えたいことに困らない英語を身につける」「個人的リサーチに積極的に取り組む」「楽しむ」全てにおいて達成できました。英語に関しては数字としても成果を自覚できるよう、夏の間に資格試験に再度挑戦します。これらの目標に加えて「人に甘える、頼る力」が身につきました。以前の私は留学・日本を離れての寮生活をするにあたって頼れる人間がいない環境下で自分で問題を解決し1人でなんでも出来るようになることが自立であると考えていました。しかし大学に行って1週間でそんなことは無理だと実感しました。知らない街、スーパーのレジの仕組みや大学事務が取り合ってくれない時の対処法(とにかく対応が遅い)、ホームレスの人に寮の中までしつこくついてこられた時の対応など、知らない場所での初めてのことに対して1人でなんとかするなど到底無理なのです。現地の企業や団体でインターンシップに挑戦した時などは尚更右も左もわからないことの連続でした。困った時や自分ではどうしようもない時にフラットメイトや同期に助けを求めるという力、そんな時に「石原沙弥を助けてやるか」と思ってもらえるような人間でいること、互いにそれができるように日頃から人とのつながりを大切に構築しておくこと、これこそが自立の一つだと気が付きました。帰国の日までそうやって誰かに助けてもらって支えられることばかりだったことで、たくさんの人の優しさと人間の素晴らしい部分にこれでもかという程触れることができました。これは英国での生活にとどまらずこれからも大切にしたい気づきです。



6.今後の抱負や、帰国後新しくチャレンジしていることを教えてください
数日前に日本に降り立ったのでまだ時差ぼけを直すことにチャレンジしているというのが本音ですが、ここからは就活を続けながら選択肢として視野に入れてきた大学院進学に向けて集めたデータをもとに卒業論文に本腰を入れようと思っています。さらに先述したように語学の資格試験にも挑戦するための準備を始めています。



7.これから留学を考えている皆さんへメッセージ、アドバイスをお願いします!
留学を考えるきっかけや理由はそれぞれかと思いますが、日本にいてもいなくても行く先々で偶然出会う人間が何よりの「宝」だと私は思います。世界地図を見たときにあちらにもこちらにも仲間がいる、という感覚は高揚感というか心強さというかうまく言葉には言い表せませんが何にも変え難い、私を幸せにしてくれる感覚です。毎日マスメディアやソーシャルメディアからは痛ましい事件や解決の糸口が見えない課題が次々に目に飛び込んできて、気を抜くとあっという間に世界が恐ろしい場所に見えて嫌いになってしまいそうです。しかし実際に現地に足を運び、暮らしを見てさまざまな国の人と話してみるとニュースで見る一側面では気がつけなかった他国の良さや、意外な問題の原因が見えたりするものです。自分になかった考え方や彼らの優しさに存分に触れると、世界との距離がグッと縮まり世界が好きになれました。百聞は一見に如かずとはよくいうものですが実際に現地で見るものが与えてくれる気づきは特別です。世界をもっと好きになるための方法として日本を飛び出して留学に挑戦する、という選択も私は素敵だと思います。


